大阪・千里山にある日本料理店「柏屋」松尾英明総料理長が、初渡韓で出合った韓国の味をレポート。甘みに果実の風味生かした韓国独特の食文化についても語った。AERA 2024年4月22日号より。
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初めて韓国に来ました。こちらはスープ料理が豊富にあるように感じました。はじめに牛骨スープの店に行きました。白濁したスープは濃厚そうに見えましたが、すっきりとしていながら深いうまみがありおいしくいただきました。
焼き肉店にも行きました。お店の雰囲気は日本の高級な焼き肉店のようでした。コリアンビーフは、とてもおいしかったです。サシも適度に入っていて、脂が軽やかで肉のうまみもしっかりしていて、とても気に入りました。サシの多い和牛と違い、いくらでも食べられそうでした。またサガリという肝臓に近い部位もいただきました。新鮮な証しと聞きましたが、ミルクっぽい香りがして、とてもおいしいものでした。久しぶりにおなかいっぱいいただきました。
韓国もまた独特な食文化を持つ国ですが、その味わいは、日本人にどことなく懐かしさを感じさせるものがあります。それは甘みの使い方の共通性によるところだと思います。しかし韓国では、砂糖を直接使うだけでなく、梅を砂糖でつけたシロップを使い果実の風味を生かします。古くは砂糖が貴重であったころ、干し柿が甘みの調味料として使われたと聞いたことがあります。
塩に関しては、洋の東西を問わず岩塩か海水から作るか、ほぼこの二つに限られますが、甘みに関しては地域ごとにさまざまな方法があります。甘みをどこから取るかは食の根本的な部分を特徴づけていると思います。きっと塩は生物として必要だから取るけれど、甘みは味覚に対する欲望のような側面があるから、世界で様々な甘みの取り方があるのだと思います。
※AERA 2024年4月22日号