日本で見かける食べ物は他にもあった。屋台では、たいやきが売られていた。中身はあんこだが、型はフナだという。
そもそも日本と韓国の食文化の違いは何だろう。日本に32年間も住んだ経験のあるミシュラン韓国社長のジェローム・ヴァンソンさんはこう語る。
「日本食は素材、生を大切にしますが、韓国料理は調理して、混ぜて、煮込むのが特徴です。出汁が相まって、まろやかで、深い味わいになります」
韓国グルメの台所ともいわれる釜山。世界各都市の優れたレストランなどを紹介する「ミシュランガイド」でも、2月にリリースされたガイドアプリで初めて対象都市となり、43軒のレストランが選ばれた。同ガイドのインターナショナル・ディレクターのグウェンダル・プレネックさんは釜山の食文化のポテンシャルについて、こう話す。
「釜山は文化が混ざり合っています。ソウルの韓国料理に比べて、釜山料理はさらに多様性があります。釜山は、伝統や地元文化を超えて、世界に対してとてもオープンマインドです」
韓国食材で会席料理
釜山の食材を生かした日本やイタリア、フランス料理の店もあるという。
訪れたのは現代的なフランス料理を提供するpalate(パレット)。床から天井まであるガラス窓からは、広々とした釜山の港湾を望める。
酸味が特徴的なパン「サワードウブレッド」の付け合わせは海藻のクリームで、釜山らしさがある。桜のような花びらの形のフランス菓子「クルスタッド」は、油でカリカリに揚げた生地の中にチキンクリームときのこパウダーが入ってスパイシー。花びらがあしらわれたラディッシュタルトは、幾重にも重なる軽い層と、玉ねぎと大根の甘みを感じて絶品だった。
今回は訪ねることはできなかったが、釜山に日本の会席料理店があると聞きつけて、シェフに話を聞いた。「日本料理 森」は日本で修業をしたキム・ワンギュさん(38)と妻の森美月さん(34)が2人で店を営んでいる。先ほどのpalateとともに、ミシュランガイド一つ星を獲得した。
「韓国の食材で日本の会席料理を作っています。魚は釜山の新鮮なサバ、のどぐろ、ハモなどを使っています。日本の海とは餌が違うのか、脂が乗っています」(キムさん)
基本的に韓国の食材だけで会席料理を作っていて、常に韓国全土で食材を探しているという。