Buda Myeonoak/そば粉100%の平壌冷麺。日本で見る韓国冷麺とも、日本のそばとも違う。よくかむと香ばしいナッツの香りがする(写真:ミシュラン提供)

朝鮮戦争の歴史も影響

 釜山の料理がおいしい理由をイさんはこう教えてくれた。

「釜山の特徴は、海、山、川、街が調和し、現在と過去、都市と漁村、農村が共存するところです。また、朝鮮戦争当時、臨時首都となり、韓国全域から多くの避難民が釜山に集まり、大都市に発展して、複雑で多様な文化と食べ物の歴史がつくられました。冷麺だけでなく、ミルミョン(小麦麺)、デジクッパなど釜山の郷土料理もこの時代の影響を受けました。ぜひ釜山にお越しになり、ダイナミックな釜山の文化と味をお楽しみください」

 釜山名物の一つである、デジクッパも食べてみたい。デジクッパとは豚肉のクッパのこと。朝鮮戦争から避難した北部の人たちが伝えた料理だと言われている。韓国で一般的なクッパは牛肉で作る。豚肉のクッパは、ソウルでは味わえない釜山ならではの名物だ。レストラン「Anmok」(アンモク)は、デジクッパをアレンジした名店だ。店を訪れたが、閉店時間前にすでに売り切れ。店主のキム・クワンミンさんが後日、メールでコメントを寄せてくれた。同店では、前肢肉、すね肉から、食感も味もいい豚の頭の肉まで使って、36時間も煮込むという。

「当店の肉汁は、赤身がたくさん付いている前肢骨で作ることで、肉の出汁(だし)のさっぱりとした味と骨汁の淡泊さを同時に感じることができます」

 スープにのせるソースは、タマネギ、ニンニクなど様々な野菜や海産物などうまみのある材料と焼き塩、韓国の汁しょうゆ(薄口しょうゆ)を煮込んで味を出しているそう。

混ぜて煮込むのが特徴

 街を歩くと、チャガルチ市場という伝統的な魚市場があった。路上で、生のタコ、魚が机やザルの上で売られていた。都心ではなかなか見られない懐かしい雰囲気のある市場だ。

 街の屋台では、海の幸が豊かな釜山ならではの名物「釜山おでん」があった。スープの味は、日本のおでんに近い。有名なのは、オムクと呼ばれる串に刺さった練り物。一口食べると、思ったよりジューシーで、コシがある。薄切りのさつま揚げのようなイメージで、蛇腹状に折りたたまれて串に刺さっていた。食べ応え十分だ。

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