岸田首相は、支援金の負担が増えても「実質的な負担は増えない」という、これまたとんでもないデタラメを言っている。ここでは、言葉のすり替えのトリックが使われた。
元々は、被保険者1人当たりの保険料の負担の議論をしているのに、それとは全く異なる「社会保障負担率」というものをまず引き合いに出した。言葉だけ見ると、なんとなく社会保障の負担の割合と読めるので、議論されていることは同じ話なのかなと勘違いしそうだ。
しかし、この数字は、「個人や企業など国民全体の所得=国民所得」を分母として、これに占める社会保険料(医療だけでなく介護なども含む)の負担の総額を分子として、その割合を示す数字に過ぎない。政府は、この定義をもとにして、さらにデタラメな説明を加えた。
まず、「分子」となる保険料の負担増を、医療・介護の「歳出改革」でできるだけ抑えれば、社会保障負担率の上昇を抑えられるという主張だ。
しかし、この「歳出改革」とは何かといえば、医療や介護のサービスのカットに他ならない。これは、食品値上げなどで見られる価格の値上げをせずに容量を減らすというステルス値上げと同じ手法だ。国民から見れば実質的には負担増なのに、これで「負担を減らす」という嘘をついているのだ。
さらに、政府は「分母」となる国民所得を賃上げによって増やせば、やはり社会保障負担率は下がると説明した。
しかし、賃上げは政府がするものではなく、企業などが行うもので、どれだけ上がるかは企業任せ。景気が悪くなれば、逆に下がる可能性もあり、政府の主張に根拠はない。
こんな説明がまかり通るなら、増税をしても賃上げがあれば、増税の負担はありませんと言っているのと同じだ。誰が見ても直観的におかしいと感じるので、この嘘で国民を騙すことにまだ成功はしていない。
賃上げや子育て支援についての岸田首相の言動を見ると、この人は、真面目に国民に向き合って、重要な政策について本当のことを説明する気は最初から全くないということがよくわかる。
筆者から見ると、その場その場で嘘を重ねて国民を騙せば良いという「とんでも詐欺師」にしか見えないのだが、皆さんにはどう見えるだろうか。