たとえば天皇陛下の即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」で雅子さまは、ローブデコルテの上に華やかなフリルがあしらわれたジャケットを合わせたように、「ここぞ」という場面では華やかなデザインを着用することも少なくない。
長年パリコレで取材を続けたファッション評論家の石原裕子さんは、ロングドレスの上に羽織った個性的なジャケットが印象深いものだったと話す。
「上の襟はごく一般的なテーラードジャケットですが、下の襟とジャケットの裾は『ほたて貝』の丸い殻をイメージした『スカラップ』にデザインされ、変化を持たせていらっしゃる。下襟の丸みを大きくとり、ジャケットのウエストから裾のひろがりをたっぷりとり、『スカラップ』のデザインを加えることで、華やかさが増しています」
あいにくの雨だったが、ドレスはたっぷりと丈をとったフレアスカート。シンプルな服装を好まれる雅子さまだが、この日は、「フリル」調のデザインが入った参拝服で大輪の花のような風格を印象付けたと石原さんは話す。
一方、翌日に明治神宮を訪れた長女の愛子さまが着用していたロングドレスは、採寸して仕立てる際に用いる「原型」のデザイン。首まわりもノーカラー(襟)で全体に装飾を省きつつも、ウエストに入る細かなギャザーでスカートがきれいにふくらんでいる。
また、雅子さまと同じ日に参拝した上皇后美智子さまは、ひさしぶりに白いロングドレスの上にケープ型の上着と小皿帽子をお召しだった。
ドレスやスーツの上に共布のマントやケープを重ねるスタイルは、美智子さまがデザイナーの故・植田いつ子さんと相談して独自に考案したものだった。植田さんによれば、公務ではコートの着脱もままならない場面が多い。このスタイルであれば、羽織ったまま手を振る動作も容易で、コートよりも素早く着脱しやすいというメリットがあったという。