入店の際の心理的なハードルを下げるのは重要な点なのだろう。全国に14店舗を展開するSELFURUGIは店員のいない無人古着屋(一部、店員のいる店舗も)だ。会計は無人のレジで客自ら行う。運営するアベンド広報担当の三田村妙子さんは、無人販売は出店当時の社会状況が関係していたと話す。

「21年12月に1号店を出店しましたが、当時はコロナ禍で人との接触を可能な限り避けようと、非接触デバイスの導入が各所で進んでいました。会話も接触もなく買い物を終えられるというのは大きなメリットでした。もちろんお客様が店員の目を気にすることなく、買い物ができるというのも強みです」

ブーム3~5年は続く

 記者も実際に店舗で古着を購入してみたが、静かな環境で思う存分試着ができ、そのメリットを実感できた。ちなみに三田村さんによれば客層の8割がZ世代。SNSで若者の流行をチェックしながら古着を仕入れる。

「今はおしゃれな着こなしの発信元はSNS。芸能人の影響も大きく、たとえば俳優の小松菜奈さんが着用されたアディダスのトラックジャケットが爆発的に流行するといったようなケースも多いので、常にリサーチしています。ただ、若い人たちが手を出しにくい、1万円以上するようなヴィンテージものは置かずに、価格は最高でも5千円にしています」(三田村さん)

 SDGs志向に店舗側の企業努力、オーバーサイズの流行、若者が個性を求める姿勢など、各要素がかみ合い、成長を続ける古着市場。ブームはどこまで続くのか。前出の石川さんは「3~5年は続く」と見ているが、一方で懸念もあると話す。

「これまで古着文化が見られなかったような土地に店舗ができたり、既存の古着屋の2号店ができたりしていますが、商品はすでに飽和状態で、店舗数も飽和状態になれば淘汰が起こります。通っていたあの店が撤退したというようなことが続けば、広く親しんでもらう古着がふたたびニッチなものになってしまう可能性もあります」

 とはいえ、30年前とは楽しみ方が様変わりした古着のブームはまだまだ続きそう。ふらっと入ってお気に入りの一着を見つけてみてはどうだろうか。(編集部・秦 正理)

AERA 2024年4月15日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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