地域によって品ぞろえが異なるのがセカンドストリート。服好きが集まる原宿店にはヴィンテージものもずらりと並ぶ(写真:ゲオホールディングス提供)

 古着屋を巡って掘り出し物を見つける──。かつての古着ブームは通のたしなみといったような趣があったが、今や古着は誰にでも親しみやすい趣味になっている。AERA2024年4月15日号より。

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「あれ、こんなところにお店あったっけ」

 かつては何もなかったところに、気づけば古着屋がある。最近そう思うことが増えた。“古着の聖地”東京・下北沢でも店舗は年々増加しているほどで、今や街中のそこかしこで見かける。YouTubeでは古着屋巡りの様子を撮影するチャンネルが乱立し人気を博す。今、1990年代以来の第2次古着ブームが到来している。

市場拡大の背景

 財務省の貿易統計によれば、過去10年間で中古の衣類やその他物品の輸入量は右肩上がりで、ここ3年は1万トン前後が続く。ファッショントレンドに詳しい東京服飾専門学校ファッションビジネス科、学科長の石川誠さんはこう話す。

「古着市場の拡大の要因は、消費者の古着へのアクセスの方法が変わってきたからだと思います。かつては高円寺や下北沢に代表されるような、70~80年代のいわゆるヴィンテージと呼ばれる古着を扱う店舗で購入するのが主でしたが、リユース、リサイクルを目的にブランド品を含めた古着を取り扱う店舗が全国的に増えたことで、古着に対する意識の垣根がなくなってきたのです」

 所狭しと雑多に洋服が並べられ、こだわりの強そうな店主が奥に陣取っている。そんな古着屋をめぐって掘り出し物を見つける。かつての古着ブームは通のたしなみといったような趣があったが、今や古着は誰にでも親しみやすい趣味になっている。

「学生募集のために高校生と触れ合う機会が多いのですが、どんな服が好きか聞くとファストファッションのブランド名は出てこず、『古着屋巡りにハマっているんです』という高校生が4人に1人はいます。近年続くオーバーサイズの流行から、親が着古したジャケットを譲り受けて愛用しているという若者もよく見る光景です」(石川さん)

 記者(40代)もここ数年で古着を愛用するようになった。これまでは古着屋に足を踏み入れる心理的ハードルの高さに身構えてしまっていたが、エイヤと入ってみればワクワクするような空間が広がっている。ブランドもジャンルもさまざまで、今までの自分なら選ばなかった服も目に入る。気に入った服を見つけてもサイズが合わなければあきらめざるを得ない一点もの。これぞという商品に対して、これは出会いだ、逃したらもう出会えない、とつい買ってしまう。宝探しの感覚に近く、楽しい。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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