AERA 2024年4月15日号より

「まずは『いままでやってきたことだから、今後もやろうとする』をやめること。飲みに誘うのが難しいと言うけど、別に飲みに誘わなくても『お土産にスイーツ買ってきたからちょっと会議室で話さない?』でもいいわけです。いい機会だと思って上司は悩んで、考えようよと言いたいところもあります」

正解に振り回されない

 もう一つ大事だと河合さんが考えるのは「本当にそれを伝えたいという気持ちがあるのなら、リスクがあっても勇気を出して自分の言葉で伝える」ことだ。

「たとえば男性上司が女性社員に『きれいになったね』と言うとセクハラだと言うけれど、言われて嬉しいことだってあるんですよ。言い方には気をつけないといけないけど、たとえば『こういうこと言うと申し訳ないけど、本当にきれいになったね』と心から言えば伝わることもあるはず。『期待してるよ』がパワハラになると言われるけれど、『本当に期待してるんだよ、僕は』と心から言えば、ちゃんと通じるんです」

 本当のところ自分はどう思っているのか。自分と対話した上で、その言葉を勇気をもって部下に紡ぐ。それをしないで、ただ何となく飲みに誘ったり、ハラスメントが気になるから「正解とされるような言葉」だけを口にしようとしても、お互いの距離が縮まることにはならない、と河合さんは言う。

「悩む中で『正解』と思われる言葉の発し方や接し方が欲しくなるでしょう。でもそれだけやっていても何も変わりません。世の中の『正解』に振り回されないこと。いまこそ部下と心の底から一人の人間として接する勇気を持つこと。それがいちばん大切。上司たちよ、いまこそ悩め!と言いたいですね」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年4月15日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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