※写真はイメージ(gettyimages)

「3密」を回避して過ごしてきたコロナ禍を経て、職場でのコミュニケーションは大きく変化した。加えて、ハラスメントへの意識の高まりも壁になっている。上司と、または部下との距離をどうとればいいのか。AERA 2024年4月15日号より。

【グラフ】上司・部下とのコミュニケーションで課題を感じているのは何%?

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 部下を食事や飲みに誘うこと一つをとっても「ムズすぎる」現代社会。マネジメント研修の講師で『あなたが部下から求められているシリアスな50のこと』の著書もある濱田秀彦さん(63)は要因の一つとして、ハラスメントという言葉が一般的に定着したことを挙げる。

「大手企業の中には、セクハラ対策として『異性の部下と1対1で飲食を共にするのは、ランチであってもダメ』というところもあります。部署内での飲み会の最後に管理職がある部下に『手締めの音頭をとって』と言ったら『それパワハラですよ』と断られた例もある」

 リモートワークの普及も影響している。

「週1、2回はリモートOKという会社も増えました。そうなると多くの社員が週末と休みをまとめるために金曜か月曜にリモートを入れます。皆がそろうのは火水木しかないんです」

 加えてマネジャーやリーダーが自ら売り上げをあげるプレーヤーとして管理職と掛け持ちする「プレイング化」が進み、上司と部下が顔を合わせる時間が減ったこと。男女ともに育児などで時短勤務をする社員が増えたことも、コミュニケーションの難しさに影響しているという。

「そんなときに、行ける人とだけ飲みニケーションしていたのでは、参加できない部下との間で温度差が出てしまう。そこに配慮することでなかなか飲み会的なイベントが打ちにくくなったという状況だと思います」

 では、どうすればいいのか。前提として上司が部下とコミュニケーションをとるのに「飲み会以外思い浮かばない」のが問題だと、濱田さんは言う。

「とある企業の管理職研修で、『風通しのよい職場づくりを目指す』という職場方針を掲げた人が多かったんです。でも『どうやって実現するか』を書いてもらうと、自分が部下時代に経験した『飲み会』『休日のバーベキュー』しか出てこない。その発想をまずは変えないと」

 そのためにはまず、「飲みニケーションという選択肢を捨てること」だと指摘する。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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