記者と政治家の“インナーサークル化”
長年の蓄積がものを言うのは、人間関係だけではありません。相手から信頼してもらうためには、「○○政権ではこうだった」「○○法が通ったときはああだった」と、過去の記憶を共有しあえる記者でないと、なかなか難しい。
時々、政治家とメディア数社が集まる交流会に混ぜてもらうと、周りの会話についていけないことがあるんです。「あれどうなん?」「あれはこうなん」「あーそうなん」みたいな感じで、ベテラン記者と政治家の間で、阿吽(あうん)の呼吸が成立してしまっている。
一方で、そういう関係を築いているからこそ、記者はオフの場でしっかり話を聞いて、会見ではあまり質問しない状況が発生しているのかなとも思います。もちろん、自分だけにしゃべってもらった話を記事に書いたり放送したりすることはあるでしょうけど、ある種“インナーサークル化”しているとも言えますよね。
「裏金問題けしからん」「自民党なにやってんだ」という空気が広がる中、世間の人々は会見で真相がはっきりすることを望んでいるけれど、メディア側がその期待に応えられない。それが、「マスコミもなにやってんだ」という不信感、さらには政治への無関心につながっている面もあるかもしれません。
とはいえ、永田町カルチャーの中で昼夜政治家に食い込み、間合いを図りながらも情報を得ている記者たちのことは尊敬しています。ただ、まだ半分外野から国政を見ていて、しかも関西圏のテレビ局の人間である自分の役割やアプローチは、また違ってくるのかなと。一般の人を政治から遠ざけないためには、表舞台の取材も大切なはず。新参者なりの持ち味や攻め方を模索していきます。
(構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)