庶民はどうしていたのだろう。庶民にとっては、「道端」がトイレだった。足回りを汚さぬよう、高い下駄を履いて出て、用を足したあとは古紙や籌木(ちゅうぎ)と呼ばれた木片で拭ったようだ。
というわけで、花の都も道端は不潔な状態だった。『落窪物語』では、いわゆるイケメンキャラの少将・道頼が、道端の糞尿のせいで服を汚してしまっている。徒歩で姫君に会いにいく途中、目上の人の行列に遭遇し、道を譲らなければならなくなった。そこでやむなく、「糞のいと多かる」路傍(ろぼう)に寄り、身を小さくしてお通しした結果、「いと臭」き姿になってしまったのだ。
(構成 生活・文化編集部 上原千穂)