日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「不眠症」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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私は、どちらかというと寝つきがあまり良くありません。いわゆる「不眠症」です。「翌日仕事だから、寝坊できない……」そう思うと、心の中で不安な気持ちが大きくなってしまい、眠りが浅くなってしまうのです。
その結果、睡眠不足が続いてしまい、途端に日中の集中力や生産性が低下します。睡眠不足は、持病の頭痛も悪化させるため、生活に悪影響をきたしてしまうのです。
ずっと昔からそうであったわけではありません。仕事をするようになり、「遅刻できない」からと、アラームを設定する度に、「寝坊したらどうしよう」という不安に駆られ、寝るのが怖くなっていったように感じています。
不眠症は国民病
さて、厚生労働省のe-ヘルスネット(※1)によると、不眠症は「国民病」であり、一般の成人の30%から40%は何らかの不眠症状を有していると書かれています。また、不眠症状のある人のうち、慢性的な不眠症は成人の約10%に認められ、加齢とともに不眠を訴える人は増加し、60歳以上では半数以上の人に認められるとあります。つまり、不眠症は特殊な疾患などではなく、よくあるコモンな疾患の一つと言えるのです。
入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く、途中で何度も目が覚めてしまう)・早朝覚醒(早朝に目覚めた後、二度寝をすることができない)といった不眠症状が改善せず、長期間にわたって続いた結果、倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など日中に様々な不調が出現するようになる、つまり「1. 夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神面や身体面の不調を自覚して生活の質が低下する」という二つが認められたときに、「不眠症」であると診断されます。