安永英樹さん(撮影/大谷百合絵)

 それはキャスティングにも反映されていて、たとえばフジテレビの大奥でSMILE-UP.のタレントさんに出てもらったのは初めてだと思います。家治を演じていただく亀梨(和也)さん、本当にお芝居が上手なんですよ。涼やかな目も、とてもいい。役にバシッとはまってました。

 あとは言葉遣いも「○○でござりまする」みたいな感じではなく今の言葉にしたり、ストーリーに現代との接着点をたくさんつけたり……。

今も昔も悩む「不妊」

――「現代との接着点」とは?

 たとえば、史実もそうなんですけど、倫子には、はじめなかなか子どもができないんです。思い悩む倫子に対し、家治は、家族って、夫婦ってなんだろう?と自問自答して、「二人で一緒にいればいいじゃないか」と投げかけたりする。

 今の時代、不妊で悩む人は多いですが、同じ人間なんだから、きっとあの時代も同じような悩みはあったんじゃないかと思うんです。だから、この「大奥」は、時代劇であって時代劇でない。舞台が江戸時代なだけの、普通のドラマなんです。

「現代との接着点」みたいな視点になるのは、僕が報道畑出身だからかもしれません。ずっと警視庁の捜査1課を担当していて、逮捕前の犯人にも会ったし、血みどろの現場に行くこともありました。

 だからドラマ作りは門外漢なんですけど、唯一生かされているものがあるとすると、生々しい人間模様をいっぱい見てきたことですね。リアルの世界では人はこうやって言うよね、っていう蓄積がある。報道だと、あくまでも真実を伝えなきゃいけないけど、フィクションだとその枠を飛び出して、表現の幅がぐっと広がる瞬間があります。

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「会えない」が成立する世界