
「M」型の違い
ほかにも、台湾の特徴として「共働き」や「若者の政治参加」が進んでいる点も挙げられるという。「共働き」については、瀬地山さん作成の2022年の「日本と韓国と台湾の年齢別の女性労働力率」のデータが参考になる。韓国や日本では30代女性の労働力率が落ち込む「M」型のくぼみが、台湾には生じていない。これは、出産・育児期に離職する女性が少ないことを示す。
「日本もかつては30代で大きなくぼみが出ていましたが、近年はM字の底が浅くなっています。ただ、それは少子化と晩婚化の影響が大きく、実際には出産退職は結構起きています。一方、台湾は出産退職が起きない、主婦を誕生させなかった社会なんです」
その理由について瀬地山さんは「小さな子どものそばには母親がいなければいけない、という規範がないから」だと説く。これはシンガポールや香港も含めた中華圏の社会に共通するという。
そういえば、中国の映画や小説では、男性が家族のために料理する場面をよく見かける。育児や家事は女性が行うもの、という刷り込みは日本よりも韓国のほうが根強く、そのことが韓国の30代女性の労働力率の落ち込みの顕著さにも表れている。
瀬地山さんが台湾と日本の違いとして挙げるのが、「食事の手作り規範」だ。
「日本は『手作りの家庭料理』を一段上に置く風土がありますが、そういうこだわりは台湾にはあまりなく、家族で屋台を利用して食べて帰る、といった食事の外注化が習慣化されています。家事水準が低くても構わないという考えが、共働きしやすい社会の根底にあります」
投票率が低い日本
「若者の政治参加」は台湾や韓国と比べ、日本は進んでいないのが実情だ。これは若者に限らず、民主主義の根幹である選挙の投票率に表れている。今年1月の台湾総統選挙の投票率は71.86%、2022年の韓国大統領選は77.1%だった。国民が直接選挙で国のトップを選ぶ「大統領制」と、国会議員が内閣総理大臣を指名する日本の「議院内閣制」との違いはあるものの、国政選挙や首長選挙の投票率が5割前後の日本とは大きな差がある。