一方、県の「通行料3000円」にも理由があった。県が説明したのが「受益者負担」だ。
富士山の安全対策には、ゲートの設置以外に噴石や落石対策も含まれる。県は、2014年の噴火で多くの死傷者を出した御嶽山(標高3067メートル)に整備されたシェルターのような施設を、富士山にも設けることを計画している。
環境省が10年に実施した調査によると、富士登山者の4人に1人は外国人で、吉田口登山道の利用者の96%は山梨県外の居住者だった。
県外の人の安全対策にかかるコストを県民の税金から支出することに、県民の理解は得られない。県側は出席者に、そう説明したという。
「ゲートによる登山者の規制やシェルターの設置等の費用を積み上げて、受益者負担という観点で通行料を算出すると、確実に1000円を超えます。さらに富士登山全体をグレードアップするには、これくらいの金額が必要になる」(県世界遺産富士山課の大谷さん)
知事の「鶴の一声」で?
通行料3000円は高いのか。高いのならば、いくらが「適正」なのか――。
県の担当者は、
「地元の声を知事に伝えていくなかで、『2000円』という金額が出てきた」
と明かす。最終的に長崎知事の「鶴の一声」で、金額が決まったようだ。
県と地元関係者の意見交換会が2月に再び開かれ、その方針が伝えられた。中村さんは、
「県は『2000円でご理解ください』の一点張りだった。それでも高い、反対だって結構言ったんだけれど、『ご理解ください。申し訳ありません』と繰り返すばかりで、会議はおしまいだった」
と振り返る。
「押し切られた」という声の一方、県の見方は異なる。
「山小屋のみなさんからも、最終的には反対意見は出なかった、と受け止めています」(大谷さん)