「地元関係者から、もう少し慎重な議論をしてほしい、という声が上がっている」
2月14日の定例記者会見で、記者からそう質問された長崎知事は、こう述べた。
「2000円は必要な経費。これからやるべきコストを積み上げたものであって、いずれは理解されると思います」
「いまやラーメンですら1杯2000円という話で、富士山の価値はそんなに低いものなのかと、あえて問いかけたい」
果たしてうまくいくのか
そして7月から、登山道ではゲートが設けられる。それをめぐってトラブルが起きるのではないかと、中村さんは心配する。
ゲートが閉鎖された午後4時以降であっても、山小屋の宿泊予約をしている登山者はゲートを通ることができる。その際は原則、山小屋の予約証明書を提示するというルールで運用される予定だ。
しかし、インターネット回線が引かれておらず、電話予約しか受け付けていない山小屋もある。予約証明書がなければゲートから山小屋に電話し、予約の有無を確認することになると見られる。
そして、特にゲートができる6合目には小屋しかなく、周辺は高い樹木もない吹きさらしの場所だ。気象条件も厳しい環境で、警備員は登山者に声をかけて現金のやり取りをし、スマホ決済ができる端末を取り扱い、さらに日本語に不慣れな外国人にも対応しなければならない。
「現場は結構、大変なことになると思う。もう、しっちゃかめっちゃかで、わけがわからないよ」
と中村さんはこぼす。
「下界」から持ち込んだ論理は、果たして富士山の現場で通用するのか。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)