キャンプから精力的に走塁の技術向上を図った大谷は、開幕戦で早速盗塁を決めた。走力を生かす場面も増えそうだ(Getty Images)

 大谷は開幕前のオープン戦で2本塁打を放ち、いずれも左方向への大きな当たり。ひじの手術の影響も感じさせていない。野球の動作解析に詳しい筑波大学の川村卓准教授は指摘する。

「一つ不安点を挙げるなら空振りです。大谷選手は積極的に振りにいくタイプで、左打者なので右腕一本で空振りした際には右腕が抜かれたような感じで制御できなくなります。ひじを守る周辺の筋肉も働かない状態になるわけです。そのときにひじに大きな負担がかからないとも限りません。ただ、すでに怖がりながらではなく、帽子が脱げそうになるくらいフルスイングできているので、今のところその心配はないかと思っています」

1点を取りにいく打撃

 本塁打に加え、打点も伸びそうだ。大谷におんぶに抱っこ状態だったエンゼルス時代とは異なり、ドジャースには強打者がずらりと並ぶ。大谷の打順2番が定位置となれば、前後を打つのは18年MVPのベッツと20年MVPのフリーマン。大谷が敬遠で勝負を避けられる機会は大幅に減りそうな見込みだ。

「昨季、ドジャースは球団史上初めて100打点超の選手が4人誕生し、100打点カルテットと呼ばれました。そのうちの一人であるJ・D・マルティネスが退団し、代わりに大谷選手が入団した形です。打線の抜群の攻撃力は維持されているので、大谷選手も軽く100打点は超えてくるのでは」(福島さん)

 川村准教授も打点増のほうがより可能性が高いと見る。

「エンゼルス時代は本塁打を狙ったスイングが目立ちましたが、それはチーム状況によって要求されていたから。今はタレントもたくさんいるので、確実に1点を取りにいくような堅実な打撃が多く見られるようになるのではないでしょうか。技術もさることながら、彼が最も優れているのは状況判断力。より勝つための打撃をしている印象です」

 本塁打の量産をファンは期待しがちだが、入団会見で「勝つことが僕にとって今一番大事なこと」と大谷が話したように、個人成績は二の次で、ワールドシリーズ優勝に重きを置いた打撃に徹する姿も見てみたい。かつてヤンキースの松井秀喜がワールドシリーズ出場をかけたリーグ優勝決定戦で、本塁生還した際に感情むき出しにガッツポーズをした場面は印象的だった。ドジャースで大谷のそんな姿を見たいと思う人も多いだろう。

次のページ