新学期を前に、昨年話題になった「ギフテッド」の記事を再配信する。ギフテッドという言葉を聞いたことがあるだろうか。「飛び級で進学」「教科書は一度読めばほとんど理解」など、天才少年少女というイメージをもつ人も多いだろう。しかし本人は、「授業が全く面白くない」「同級生と話が合わない」「学校に行くのが辛い」といった負の側面を感じていることも少なくない。表からは見えづらい「心のうち」はいかなるものなのか。今回は、IQ154、小学4年生で英検準1級に合格したという小林都央さん(11)のケースを紹介する。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集>(この記事は「AERA dot.」2023年5月24日に配信したものの再配信です。年齢は2023年3月時点、その他肩書などは配信時のまま)
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■小2で高IQ集団「MENSA」に認定
パソコンの画面に映る少年は、大きく口を開けて笑顔を見せてくれるとてもあどけない小学生だった。東京都に住む小林都央さん(11)とオンラインツールの「Zoom」で初めて会ったのは2021年12月のことだった。ヘアドネーション(髪の毛の寄付)のために伸ばした長い髪を束ね、くるくると変わる表情で語ってくれたのは、学校に通うことのつらさだった。
「学校に行かないといけない必要性や義務は理解しています。でもぼくにとって学校は、ありのままでいられない場所で、本音を言うと好きじゃない」
都央さんのIQ(知能指数)は154。平均とされる100を大きく上回る。特別な才能を持つとされる「ギフテッド」だ。
小学4年で英検準1級(大学中級程度)、小学5年で漢字検定2級(高校卒業程度)に合格し、英語と日本語を操るバイリンガル。人口の上位2%のIQを持つ人たちが参加する「JAPAN MENSA」に小学2年生で認定された。複数のプログラミング大会で、特別賞などを受賞。住んでいる地元の教育委員会からは、映像コンテストやギフテッド向けのプログラムで優秀な成績を収めたとして、2年連続で表彰を受けた。世界屈指の医学部を有し、最難関大のひとつであるアメリカのジョンズ・ホプキンス大学のギフテッド向けプログラムでは最優秀の成績を収めた。
都央さんの経歴には、こうした数々のきらびやかなものが並ぶ。一方で、幼いころから集団での生活にストレスを感じ、適応に苦しんできた。現在は週に2日ほど学校に行く「選択的登校」をとっている。
都央さんとの出会いのきっかけとなったのは、コロナ禍の一斉休校を機に不登校になった子どもたちを紹介した連載だった。連載が朝日新聞に掲載された21年11月、一通のメールが届いた。