シーマとの長い付き合いについて話すにつれ、伊藤さんの目が輝いていく。シーマに対する熱い思いが、聞く者にダイレクトに伝わってきた

 レストアをしていただいたメカニックの方に対しては、「感謝、感謝」しかありません。ホイールも、同じものをわざわざ作ってくださったり、すごく輝いているなって感じています。時々見学に行くと、メカニックの方たちも楽しんでやってくれてる雰囲気が伝わってきました。 作業の一番最後にエンブレムをつけるんですが、「これでお別れって、なんだか寂しいですね」ってメカニックの方がポツンとつぶやいたのを今でも思い出します。ついていた古いエンブレムは、フォトブックの中に入れてくれました。かけがえのない宝物です。

 車に限ったことではありませんが、一昔前ならちょっと故障するとすぐに手放してしまうという傾向はあったと思います。一つのものを大切に使うのって、特に今の時代、一つの認識だと思うんです。それと、ずっと乗り続けるのが、究極のエコだとも思います。解体するにも汚染されたりするわけだし、不必要なものは、捨てなきゃいけないわけで。何でもかんでも、捨てちゃうのではなくて、車に関しても、魂が宿っているのを感じるのは、長く乗ってないと、湧いてこない気持ちだと思います。

 車庫に入れて、今日はもう運転しないけど、「今日も一日ありがとうね」って声をかけて、エンジンを切るんです。

(文 今村博幸 写真 関口 純/生活・文化編集部)