個人情報が蓄積された“闇名簿”なるものが存在し、犯罪グループはそれを基に強盗や詐欺の狙い先を決めているという。名簿には、個人の氏名、住所、家族構成や、どんな通販商品を買ったのか、資産はどのくらいあるのか、といった情報が書き込まれている。なぜそんな詳細なデータを大量に集めることが可能なのか。取材を進めると、「ルフィ事件」でも使われたとみられる闇名簿について、詳細を知る男性に接触ができた。
「これが闇名簿です」
企業から情報漏洩(ろうえい)されたデータなど大量の個人データを含んだ闇名簿を売っているという30代後半のブローカーB氏が、名簿の一部を見せてくれた。
「まずはリスト。お客さんにわかりやすくするため、僕がどんな情報を持っているのかをまとめた、いわゆる闇名簿の“メニュー”みたいなものです」
そう言って目の前に出してくれた名簿には、ネットショップでの化粧品購入者やネット通信の契約者、競馬の馬券購入者、サプリ購入者……など、名簿の属性が書かれたリストが967件並んでいた。それぞれ、氏名、住所、電話番号などが書かれているか、いないかを、「○」「×」で記している。
3都県の住民票が
きわめつきは住民票だ。東京都、神奈川県、埼玉県で、それぞれ三十数万件以上ある。家族構成、職業、預貯金の有無、これまでに特殊詐欺の被害に遭ったかどうかの「○」「×」など。
リストのすべての件数を合わせると、延べ数千万件分という信じられないような数字になる。
そのうちの一つをじっくりと見させてもらった。
「これは、とある商材を購入したリスト。氏名や住所、電話番号のみ。うちなら、その家の資産額がわかるリストもありますよ。個人情報がダダ漏れですから、こんなリストを作るのは簡単ですよ。売れる金額はケースバイケースですが、1人あたりのクレジットカード情報だけで数千円で売れることもあります。闇名簿でもうけた金で高い時計や芸術品を買って、また転売して金を増やしています」
B氏は、屈託もてらいもなく、さらっとそう話した。
実際、個人情報が流出したというニュースは頻発しているといっていい。