とはいえ、驚かすことよりも、大事にしているのは、ご祝儀を渡すときはちゃんといい金額をあげるってことだ。相手へのリスペクトもあるけど、もらった方も悪い気はしないだろう。どんなに金が無くてもご祝儀はちゃんとカッコつけて渡してきたつもりだ。要するに見栄っ張りだ。

 だって、現金が一番わかりやすいし、すぐに役に立つだろう。そこは女房も理解していて、うちにどんなに金が無くてもそれなりの額を、ちゃんとピン札で揃えて渡してくれた。女房の方がそういう面ではしっかりしていたし、カッコ悪い思いをさせたくないって気持ちが強かったんじゃないかな。どうせやるんだったら、ビックリするほどシャキっとしなよ! っていう性格だったからね。もらった方に「え!? こんなに!」って思われた方が後々自分の役に立つよ。せっかく金を渡したのにケチだって思われるのも癪だしね。

女房からのプレゼント

 女房からもお祝いでいろいろプレゼントをもらったけど、一番嬉しかったのは、馬場さんが身につけていたのと同じ、プラチナのロレックスだ。これは馬場さんが大事な場面でいつもつけていた時計で、俺もそれを見ていいなあと思っていて、ことあるごとに女房に話していたんだ。そうしたら、ある年の誕生日プレゼントで「はい、これ」って、同じロレックスをくれた。こういうサプライズはOKだ(笑)。

 このロレックスはもちろん気に入って、大事な場面だけでつける馬場さんと違って、俺は四六時中つけていたんだ。それほど気に入っていたんだけど、引退後の生活のためにと始めた寿司屋の経営が傾いて、結局売ってしまった。

 そのことを女房に話したら「いいんじゃない、店が厳しいんだから」ってあっけらかんとして言うんだよ。てっきり怒られるかと思ったけど、俺よりも女房の方が太っ腹だったね。

 ただ、ロレックスを売った相手がさっきの小沢の親父だから、また買い戻してやろうかな。今、ロレックスもずいぶん値上がりしたし、ちょっと色をつければ小沢の親父も戻してくれるだろう。よし、競馬を当てて買い戻すかな。考え方が相撲取りらしくていいだろう!(笑)

(構成・高橋ダイスケ)

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