新型「プリウス」。全長4540×全幅1760mm×全高1470mm、ホイールベースが2700mm。全体的な雰囲気は現行モデルに近い(Photo by Kenji Momota)
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リアハッチを開いた状態(Photo by Kenji Momota)
インテリアはステアリング等、「MIRAI」との部品共通性が多い(Photo by Kenji Momota)
フランクフルトショーのホール2、吹き抜けのメルセデスブース。壇上には新型Sクラスクーペ等(Photo by Kenji Momota)
クロスオーバーSUVとして近年量産化される、「GLCクーペ」(Photo by Kenji Momota)
先進的ドライバーアシストシステム(ADAS)では、欧州での歩行者保護に関する法整備等を睨んで、補助的自動運転や完全自動運転の実証を行う(Photo by Kenji Momota)
ダイムラーが世界8カ国で展開している、カーシェアリングの「CAR2GO」。旧型スマートに加えて最近、新型スマートも導入(Photo by Kenji Momota)
メルセデスのマーケットイン戦略、メルセデス・ミー(Photo by Kenji Momota)
メルセデスのカーシェアリング事業部のひとつ、moovel事業部のRalf Echtler氏(Photo by Kenji Momota)

●世界が注目する新型「プリウス」 各国のジャーナリスト・関係者の評価は?

 2015年9月15日、午後12時45分から午後1時までの15分間。世界最大級の自動車関連イベント、IAA(Internationale Automobil Ausstellung/正式名称:国際モーターショー、通称:フランクフルトモーターショー)、ホール8のトヨタブース。

 世界各国のメディアが第四世代となる新型「プリウス」の実車を見ようと詰めかけた。トヨタが配布した資料や会場内の展示物の表記では「ワールドプレミア(世界初公開)」としているが、実はトヨタは同車を9月9日に米ラスベガスで開催した自社イベントですでに公開している。

 フランクフルトショーの記者会見後、各国のメディア関係者や自動車業界関係者に新型「プリウス」の印象を聞いてみた。その回答のいくつかを以下に列挙してみよう。

「隣に展示されている燃料電池車のMIRAIにデザインが似ている」
「優れたエアロダイナミクスが手に取るように分かる」
「もっと斬新な進化を期待していたが、第三世代からの正常進化でガッカリした」
「ボンネットを開けることが許されず、またパワーユニットや二次電池の展示もなかった。我々が最も関心のある動力系統の詳細が分からないので、現段階ではクルマ全体としての評価ができない」
「欧州メーカーは2021年の欧州CO2規制を睨んで、プラグインハイブリッド車とEVを投入し、ハイブリッド車のラインアップが減る。そのため、プリウスは確かに高性能車だと思うが、少なくとも欧州市場ではプリウスのポジショニングがこれまでとは変わる」

 筆者としても、上記の意見にほぼ同意する。機械工学と材料工学による軽量化、流体力学による車体造形の洗練、そして電子工学による車載器のインフォテインメントに関する進化等を駆使した、トヨタが考える「セールスボリュームが大きい究極のエコカー」だと思った。

 広報資料には現行車(第三世代)と比較して燃費は18%向上とあり、パワートレインと二次電池の詳細については東京モーターショー(一般公開2015年10月31日~11月8日)で発表される。日本での発売予定は2015年末である。

●トヨタが敵わないメルセデスのビジネス戦略

 新型「プリウス」がどんなに優れたクルマであっても、フランクフルトショーの主役はやはり今年もメルセデスだった。

 会場全体で合計11のホールと複数の特設施設があったが、ホール2は今回もメルセデス専用の館となった。1階のフロアは小型車スマートのスペースで、中二階に設けられた扉をくぐると、メインステージから縦方向3フロア分をぶち抜いた巨大な空間が出現。見学者はエスカレーターで最上階に誘導され、そこからメインステージに向かって各フロアを見て回る。これはシュトゥットガルトにあるダイムラー本社のメルセデス博物館と同じシステムだ。

 このような導線を歩くことで、我々メディア関係者ですら「メルセデスワールド」に引き込まれてしまう。筆者は長年に渡り、メルセデスを肌感覚で見てきた。シュトゥットガルト周辺のメルセデス関連施設、メルセデスに製品を納入するドイツ大手の自動車部品企業、さらにドイツ各地のメルセデス関連アフターマーケット事業者等、多角的に同社と接してきた。また、筆者自身の愛車遍歴のなかでも、メルセデスとの関わりは長い。

 そうした経験を踏まえて、メルセデスの強みを3つの領域に分類し解析してみたい。

●エコカー対応では意外にもフレキシブルな姿勢

 1800年代後半、ガソリンエンジン車を世に送り出して以来、いつの時代でも「ベンツ」または「メルセデス」は世界最高の高級車ブランドとして君臨してきた。その舞台裏ではシーメンス、ボッシュ、マーレー等のドイツ部品メーカーが技術面で下支えをし、そこにメルセデス本社のデザインとマーケティングが密接に融合してきた。

 そうしたなか、日本を含む世界の自動車メーカーの多くが、メルセデスを「ベンチマーク」と称し、市販車を分解調査するリバースエンジニアリングによって自社製品の研究開発を行ってきた。

 クルマの分類である「車格」について、メルセデスは90年代から、Cクラス・Eクラス・Sクラスという、コンパクト・ミドル・ラージという基本系を確立。これにライバルBMWを筆頭とする欧州高級車メーカーやレクサス、インフィニティ、アキュラという日系プレミアムも追従した。この辺りまでは、メルセデスは旧来型の自動車産業構造で対応してきたと思う。

 それが2000年台中盤以降になると、トレンドメーキングの手法が変わってくる。ざっくり言えば、時代の流れを読みながら、メルセデス側が変化していったのだ。

 まずパワートレインの電動化については、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車という環境対応車開発のロードマップを描いたが、GM・BMWとのハイブリッド車開発における提携の解消、リチウムイオン二次電池の内製化の見直し等、その姿勢は「上手くいかなければ、とっとと変える」という非常にフレキシブルなものだ。「プリウス」を基点に「MIRAI」を仮想的な終着点とした、普遍的な環境車のロードマップを構えているトヨタとは違う。

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