世界でも睡眠時間の短い日本。残業や家事などに追われて十分な睡眠がとれない場合など、同じ状況が誰しもに起こり得る。どう睡眠を補えばいいのだろう。

「理想は睡眠負債をためないことですが、それができない場合によいのは、休前日に早く寝て、起きる時間は変えないこと。体内時計がずれる最たる原因は、リセットに大切な朝の光を浴びられないこと、夜に光を浴びてしまうことで、この両方を避けられます。最悪は『夜更かし&朝寝坊』です。とはいえ、いつもより数時間早く寝るのは体内時計の特性からも難しいので、無理な場合はいつもの時間に寝て、短めでも朝起きる。その晩は早く寝られるようになります。それも厳しければ昼寝を挟んで整えていくのも手です。ただし早めの時刻に短時間で」

 春は進学、就職、転勤などで生活が大きく変わることも多いが、起きる時間から睡眠リズムを調整していくのがいいようだ。

クロノタイプはある程度調整することが可能。カギは「光」

 自分のクロノタイプに生活を合わせられたら言うことはないが、それができる人ばかりではない。では、クロノタイプは変えられるのか。北村氏によると、生活環境を変えることである程度変えることはできる。カギは「光」だ。

「アメリカでの実証があります。1週間の都市生活後に自然の中で1週間、太陽を遮るのはテントぐらい、日が暮れたら光は焚き火だけの生活を送った実験で、都市生活で夜型だった人がすっかり朝型化したのです。週末だけでも一定程度の同様の結果が出ており、日本でも子供のキャンプ研究で同じような傾向が見られました。ここにはいかに日の光を遮るものや夜の人工照明が影響するかも示されます」

 この実験のような極端なことは無理でも、少しでも調整ができれば楽になることも多いだろう。適切な睡眠を確保して朝すっきり目覚め、パフォーマンスを発揮するためにも「光の浴び方の管理が重要」だという。

「朝起きて大体1時間以内に太陽の光を浴びるとより朝型化しやすくなります。夜も全く光を浴びないのは難しいですが、光の波長を変えるだけでも違います。白っぽい色よりオレンジっぽい色に。白い光にも含まれるブルーライトはできるだけ避けたいですが、ナイトモードやブルーライトカットのシートやレンズで軽減することも可能です」

 スマホを寝る直前まで見るといった行為はもちろんNGだ。さらにクロノタイプのいかんにかかわらず安眠を妨げるものとして、カフェインなどの刺激物のほか寝酒や遅い食事もあげられる。

「お酒はアルコール分解による脱水で特に睡眠後半の質を低下させ、中途覚醒で時間も短くなりがち。食事は就寝のおおむね3時間前までがよいといわれています」

 睡眠は健康の基盤。質の大切さが重視されるようになり、規則性や昼寝の可否など、睡眠に関する研究が進んでさまざまなことが解明されてきている。その一つのクロノタイプで理想の生活リズムがわかれば、よりよい活動ができるようになるかもしれない。少しでもずれを調整できれば、やりたいことに挑戦しやすくなるのでは。それは人生の充実につながるはずだ。

(文/石井聖子)

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