ロックバンド怒天のボーカルを務める増子直純さん。俳優としても活躍している(撮影/品田裕美)
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 自衛隊入隊、リングアナ、包丁の実演販売という異色の経歴を持つ、バンド「怒髪天」のボーカル増子直純さん。近年では『スッキリ』(日本テレビ系)のマンスリーMCや、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、『季節のない街』(動画配信サービスDisney+)など宮藤官九郎さんが手がける作品に出演する俳優として、彼のことを記憶している人も多いだろう。

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 1984年に札幌で結成され、40周年を迎えた怒髪天。パンクやロックンロール、歌謡曲などを取り込んだバンドサウンド、人生の悲喜こもごもをリアルに表現した歌によって、GLAY、スピッツのメンバーをはじめ、数多くのミュージシャンにリスペクトされている骨太のロックバンドだ。2014年1月に結成30周年を記念して行われた初の日本武道館ライブは当時“史上最遅の武道館公演”と呼ばれ、大きな話題を集めた。

 ボーカルの増子直純は、高校卒業後2年間の自衛隊入隊を経験。バンド活動休止中の1990年代後半にはリングアナ、包丁の実演販売などで生計を立てるなど、一筋縄ではいかない経歴の持ち主だ。

 コロナ禍を乗り越え、順調に活動を続けてきた怒髪天だが、40周年を記念した全国ツアーの直前にベースの清水泰次を解雇するという事態に。何度も壁にブチ当たりながら、それでもバンドマンとして進み続ける増子に“人生とバンド”について聞いた。

――結成40周年のツアーの直前、ベーシストの清水泰次さんが解雇され、大きなニュースになりました。(※2024年2月9日に怒髪天のHPで「数年来に渡って度重なる信頼を損なう言動があり、その都度、本人、メンバー、スタッフ間で問題解決に向けて話し合いと対策を行って参りましたが、今回、これから先もバンド活動を共にすることは困難であると判断し怒髪天から解雇することとしたしました」〈一部抜粋〉と発表された)

脱退じゃなくて解雇。それくらいしないときちんと自分と向き合えない状況だったし、このままだと破滅するだけだなと。40年近く一緒にバンドをやってきて、数えきれないほどの失敗を許してチャンスを与えてきたけど、遅きに失したんだと思う。

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メンバー解雇は苦渋の選択