教誨師のハビエル・ガラルダ神父(撮影/大谷百合絵)

頭に布をかぶせられ連れて行かれた

 死刑への恐怖を口にする人はいなかったが、ガラルダさんはかつて刑務官から、「朝に人が来ると、執行されるのかと死刑囚たちが緊張するので、面会は午後にして下さい」と言われたという。

 担当している死刑囚の死刑が執行される前日には、拘置所から「明日の朝、来ていただけませんか?」と電話がかかってくる。ガラルダさんは、10年以上前、中年の男性死刑囚と執行直前に面会した時の様子を話してくれた。

「彼はすごく落ち着いていました。まずミサをして彼自身が聖書を朗読した後、5分間だけ話ができた。私が『死は永遠の命への門で、死ぬ時はキリストのところに迎えてもらえる』と伝えると、彼はうなずいて聞いていました。そして『ありがとうございます。赦してください』と言いました。その後メガネを後ろから取られて、頭に布をかぶせられて、ドアの向こうへ連れて行かれた。しばらくして彼の遺体が運ばれてきて、簡単な葬儀をしたのですが、申し訳ない気持ちからか、遺体に近寄ろうとしない職員もいました。法務大臣が死刑執行のハンコを押すのは簡単かもしれませんが、刑務官で、自ら望んで死刑囚を手にかける人はいません。私は、死刑制度がなくなる日が来ればいいと思っています」

 座間9人殺害事件の白石死刑囚は今、東京拘置所で執行までの日々を過ごしている。前出の大森さんは、担当弁護士という立場でなくなってからも半年に1度、面会に足を運んでいるという。

「面会では、白石さんが最近読んだ画集の話とか、他愛もない話をします。でも20分間の会話も難しいほど体力が落ちているようで、途中で机に伏せてしまうこともあります。白石さんが、今更自分の本心を話してくれるとは思っていません。でも、面会できる民間人が5人に制限されている中で、なぜか自分の名前をリストに入れてくれた以上、会いに行かなきゃという気持ちになるんですよね」(大森さん)

“死刑を選んだ死刑囚”という特殊な存在に、大森さんは今も向き合い続けている。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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