「収入から家賃や生活費などを除いて手元に残るお金も、日本よりアメリカのほうがずっと多かった。勤務日数を増やしたらもっと稼げたと思いますが、違法営業を行う店で働くいわば“綱渡り状態”が、思った以上に精神的にきつくて、私は週4勤務が精一杯でした」

 違法営業を行う店で働く“綱渡り状態”─。それは、常に警察のガサ入れなどに気を配りながら接客せねばならない状態だ。ガサ入れ時には、オーナーが部屋の外から、あらかじめ共有されている合図を叫ぶが、警察が部屋に入った時にあたかも「マッサージのみを行っている店」のように、何事もなかった状態にしておかなければならない。服を着るのが間に合わなかったりすると、間一髪の差で現行犯逮捕されることもありうる。警察が突然、抜き打ちでチェックに訪れることもしばしばで、常に外の様子に神経を研ぎ澄ませながらの接客には、想像以上に疲労感が募った。近隣の店が摘発されたなどと聞けば、より緊張感が高まった。

 だが、仕事そのものは嫌いではなかった。

「私には結構、合っていたんだと思います」

 自分なりに試行錯誤しながら、接客やサービスを頑張ると、成果が目に見えて返ってくる。仕事を広げるために、豊胸手術もしたし、トーク力も磨いた。客に喜んでもらうために、サービス面でのテクニックもいろいろと学んだ。

「そうやって自分で努力したら、お金という形で目に見えて返ってくるのが楽しかった。だから仕事にやりがいも感じていました」

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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