日本経済停滞により「稼げる」海外に目を向ける人たちが増える中、海外で身体を売ることを選んだ人もいる。渡米して性風俗の仕事をしていたアイコさん(仮名・36歳)だ。どんなきっかけで“夜の世界”に飛び込み、そこで何を感じたのか。朝日新書『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(著:松岡かすみ)から一部を抜粋、再編集して紹介する。
本書では、違法である性風俗業での海外出稼ぎの実体験のみならず、出稼ぎがはらむリスクやそこに至る社会的要因などを多方面から取材。個人の責任如何でなく、現代日本社会全体で考えるべき問題を提起している。
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アメリカ・サンディエゴ在住のアイコさん(仮名・36歳)。現地にいる知人からの誘いがきっかけで、アメリカに飛んで性風俗の仕事をした後、現在は個人ライフコーチの起業家として活動している。
東北地方の出身。高校卒業とともに上京し、フリーターを経て、25歳でキャバクラやスナックでの水商売をスタートした。働いて稼いだらしばらく遊んで暮らし、お金が底をつきそうになったらまた働く。これと言ってやりたいことが見つからず、「あの頃は、どこか刹那的に生きていた」と振り返る。
そんな生活でも、心のどこかに漠然とあったのがアメリカに対する憧れだ。ハリウッド映画などで描かれる、アメリカの“夜の世界”にも強く興味を惹かれた。きらびやかな都会の夜の街に、ドレスアップ、お酒、カジノ、大人の男女の駆け引き、セックス……。いつか自分も、こんな経験をしてみたいと思った。