独自の「ふるさと回帰型」仮設

 今回、奥能登では「ふるさと回帰型」という独自の仮設住宅を造ろうとしています。まちなかに極小のコンパクトシティが点在するような雰囲気でしょうか。

 こんなステップで進んでいくイメージです。まずは震災でつぶれた建物を取り除くと、そこに土地が空く。その歯抜けになった土地を提供してもらい、その土地の持ち主の仮設住宅をつくる。さらに敷地内の余るスペースに、もう1〜2軒の仮設住宅もつくる。すると、従来よりも世帯数が増える。空き地ができた所から徐々に人も集積していく。しかも、土地の持ち主は元いた場所に戻れるから、もともとのコミュニティーが維持できる。

「ふるさと回帰型」仮設住宅は、住む人がそこに定着することを前提にしています。そのため、応急的なつくりながらも、木造の戸建て風に仕上げる。一軒出ていっても、仮設住宅同士をつないで、居住区間のクオリティーを上げることもできる。

 東日本大震災などでは、集中型でドーンと並べた仮設住宅がメインでした。やがて空き家が目立つようになり、何度も統廃合を繰り返す道筋をたどりました。そうすると人によっては、3回も4回も引っ越しさせられることになる。コミュニティーとしての人間関係は壊れてしまう。

 そうしたデメリットをカバーする「ふるさと回帰型仮設住宅」を、県は発災前よりも一歩進んだ未来を目指す「創造的復興」と位置づけて公表しています。

輪島市内に建設中の仮設住宅(撮影/古川雅子)

コミュニティセンターを軸に

下水道の復旧は年単位。避難先で転職した人もいるでしょうが、避難先から地元に通勤する選択肢もありますよね。後者を選択したい人にとっては、仮設住宅の各拠点に隣接して建設する予定の「コミュニティセンター」が職場になるかもしれません。すでに完成した輪島キリコ会館多目的広場の仮設住宅は、コミュニティセンターの設置が織り込み済みです。

「コミュニティセンター」は単なる集会所ではありません。ここに、福祉や医療の機能をひもづけることも検討されているのです。例えばデイサービス、相談事業、遠隔診療などがその一例。私は、仮設住宅に住む人を訪問してケアを提供するサービスなどが、福祉・医療事業再開のスモールステップとなりうると考えています。

従来の震災時には仮設住宅の拠点として、「サポートセンター」が設けられていました。けれどもサポートという名称ですと、世話をされる側というイメージが強いという意見がありました。そこで「住民のコミュニティー力を引き出す」方向性を示したい県は、新たに「コミュニティセンター」というネーミングを使っています。

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分け隔てなく支える“ごちゃまぜ”