――大変、興味深い指摘です。2022年の『フォーリン・アフェアーズ』誌で、あなたは「リベラル民主主義社会では価値の共有が必須だ」と述べています。トクヴィルの言葉で言うと「心の習慣」です。またあなたは、リベラル民主主義社会では、そのような価値を公共心やオープンマインド、寛容性そして公共の問題に対する前向きな関与といった具合に、優先順位をつける必要性を説いています。この点についてはどうお考えですか。

 フランシス・フクヤマ:これは民主主義を考えるうえで、昔ながらの試みです。民主主義では、一定の団結が求められます。コミュニティのために犠牲を払う必要もあるでしょう。

 その基本的な一例が、軍隊の任務です。軍隊は攻撃を受ければ、自己を防衛します。それは、まさにウクライナ人がやっていることです。そこでは、一定の愛国心や公共心が必要になります。個別の課題では異なる意見を持つことが認められなければなりませんが、集団で何かを達成しないといけない局面で団結できるようにするには、一定の価値を共有していることが必要なのです。その一つが、国民としてのアイデンティティ(自己同一性)です。

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リベラルな社会がうまくいくコツ