東北や北陸地方で、クマの出没が相次いでいる。通常は冬眠しているはずの時期だが、目撃件数が例年の10倍になっている地域もある。昨年はクマが各地で大量出没し、人的被害が過去最多となったが、専門家はその「余波」が背景にあると指摘する。
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岩手県北上市の幹線道路沿いにある大型商業施設「江釣子(えづりこ)ショッピングセンターパル」に、体長50センチほどの子グマが現れたのは、1月9日午後2時ごろのことだった。
防犯カメラには、店の外に出ようとしていた女性客が、自動ドアの付近で後ずさりし、その直後にクマが飛び込んでくる様子が写っていた。
施設の職員によると、クマは店内に入らずに風除室(玄関フード)の奥に行き、買い物客がショッピングカートなどで壁を作って移動させないようにした。そこに駆けつけた警察や猟友会がクマを捕獲し、その後、山に放された。
職員によると、施設の周辺では2日ほど前からクマが目撃されていたという。
「子グマは、左の前脚がありませんでした。けがをしたのか、生まれつきなのかはわかりませんが、それで親グマに見放されたのか、迷子になって周辺をさまよっていたのだと思います。暴れることもなく、風除室の隅で休んでいる、という感じでした」
マスコミ対策で苦情は激減
17日には秋田県美郷町で、小学校のグラウンドの木に登っている子グマが見つかった。
同町によると、14日から周辺で相次いで目撃情報があり、登下校の際にはできるだけ保護者が車で送り迎えをするよう呼びかけ、警戒していたさなかだった。
クマは翌日、駆除されたという。
美郷町といえば昨年10月、作業小屋にクマ3頭が侵入。駆除されたことが報道されると、「かわいそう」「なぜ殺すんだ」などと町役場に抗議の電話が殺到した町だ。
この出来事をふまえ、町は報道機関に対し、できるだけクマの映像を放送しないように求めたといい、実際に苦情はなかったという。