センサーカメラを見つめる子グマ。学術捕獲後、同じ場所で放されたという=2022年7月撮影、山崎晃司教授提供

 環境省によると、今年度に捕殺されたクマは、全国で8733頭(12月末現在)に上り、昨年度の3886頭の倍以上になっている。

「猟師は心情的に、母グマだけを撃ち、子グマは逃がす場合がある。母グマだけがわなにかかり、子グマは逃げてしまうこともある。そして冬眠できない孤児グマが徘徊し、目撃件数を底上げしているのだと思います」

 山崎さんによると、子グマが冬眠せず、単独で冬を越すことは、かなり難しい。

 そして生き残った場合も、母グマからの学習の機会がないため、人間の集落近くに定着するなど「問題」のあるクマになる恐れがあるという。
 

今年もクマは出没するのか

 クマが冬眠から目覚めてくるのは、3月中旬以降になる。

 昨年は凶作だったブナの実などの回復が見込まれることや、多くのクマが駆除されたことなどから、今年は昨年のようなクマの大量出没はないと見られている。しかし、山崎さんによると、クマの科学的な調査は資金や人材不足のために、これまでほとんど実施されてこなかったという。

学術捕獲用のわなに現われたクマ。捕獲後、同じ場所で放された=昨年6月撮影、山崎晃司教授提供

 環境省は、クマによる人的被害が昨年、過去最多になったことを受け、ツキノワグマを「指定管理鳥獣」に指定し、個体数のモニタリングなどを強化する方針だ。

「指定管理鳥獣」は全国的に個体数が増えて農作物や生態系などに被害を及ぼす野生動物を指定するもので、現在はニホンジカとイノシシが指定されている。広域的な個体数管理などのため、捕獲や調査などを国が支援することになる。

 山崎さんは、各自治体が交付金を活用し、生息範囲や年齢、成育状況、遺伝情報など、クマの生態についての調査が進むことを期待している。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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