小児病棟では、隣のベッドの子が亡くなることもある。付き添い入院を経験した女性は「胸が締め付けられるような日々でした」(写真:gettyimages)

 24時間の付き添い、オムツ交換、食事の世話──。小児がんの子どもを持つ親の生活は過酷極まりない。病院の人手不足により重要な戦力とみなされているからだ。親の負担はきょうだい児にも影響する。サポート体制の整備が急務だ。AERA 2024年2月19日号より。

【写真】子どものベッドで一緒に寝る人は多い

*  *  *

 大阪府で暮らすパート勤務の女性(48)の長男(12)は1歳半の時、小児がんと診断された。腫瘍を摘出するため、すぐに手術が必要と言われ、自宅から車で約1時間半のところにある病院に入院することになった。手続きの時、最初に言われたのは「24時間の付き添いが必要です」という言葉だったという。女性は、

「まだ幼いから一緒にいたいと思う一方で、付き添う以外の選択肢がない状況に『どうして?』と疑問に思う気持ちがありました。でも、病院は保育園ではないから、仕方ないのかな、とも思っていました」

 と打ち明ける。会社員の夫(49)は出張が多く激務だったため、当時まだ3歳だった長女は、九州から呼び寄せた実母に預けた。

子ども用ベッドで眠る

 そこからの日々は過酷を極めたという。病院では、長男の検査や点滴の見守り、オムツ交換、食事の世話などに追われ、気が休まる時間はほぼゼロ。自分の食事は、わずかな空き時間に院内のコンビニのおにぎりや持ち込んだカップラーメンを大急ぎで食べた。

 簡易シャワーは一つしかなく、病院職員と兼用の予約制。他の保護者らも利用するため、なかなか空きがなく、ようやく取れた予約時間に長男の治療が入ってしまい、数日間シャワーを浴びないことも度々あったという。夜は、長男が眠る子ども用ベッドで丸くなって一緒に眠った。帰宅できるのは、夫と交代できる週末のわずかな時間だけだったという。女性は、

「長男の病状が心配だったことはもちろんですが、長女に思うように会えないことや、すでに70代だった母の負担も気になりました。私自身もよく眠れていないので、疲れきっていました」

 と振り返る。

子どものベッドで一緒に寝る人は多い。こども家庭庁と厚生労働省は今年度、小児の入院医療機関を対象に実態調査に取り組み、対策を検討する予定だ(写真:NPO法人「キープ・ママ・スマイリング」提供)

 ちょうど長女の3年保育の幼稚園の入園試験の時期だったが、準備をする余裕が全くなく、希望していなかった2年保育の幼稚園に通わざるを得なくなったことも心にずしりとのしかかった。長男は1年半の入院を経て退院。現在は再発の不安を抱えながらも元気に学校に通っているが、女性はこう話す。

「当時を思い出すと今も涙が出ます。苦しくて悲しくて、誰も助けてくれないような孤独感が強かったですね」

著者プロフィールを見る
古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

古田真梨子の記事一覧はこちら
次のページ