天皇陛下は2月23日、64歳の誕生日を迎えられる。元日に起きた能登半島地震で取りやめになった一般参賀も予定され、新型コロナ対策の抽選もなく、広く国民から祝賀を受けるという。天皇陛下とご一家の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA」に2019年11月1日に掲載された記事の再配信です。肩書や年齢等は当時のもの)。
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かつて天皇陛下は、理想のお妃像を「価値観が同じであること」と語った。おふたりが同じくする「価値観」は、遠くイギリスの地での共通体験から生まれたものだった。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。
夜中のオックスフォード大学学生寮。深夜まで自室で勉強し、小腹をすかせた学生たちが一つしかないキッチンに集まってくる。缶に入ったベイクドビーンズを温めて食べるためだ。朝昼晩をともに過ごし、パジャマ姿でもお構いなし。文字どおり、「裸のつきあい」が前提の学生寮には、爵位を持つ貴族など、世界各国から来た様々な立場の学生が暮らしていた──。
皇后雅子さま(55)のご学友、土地陽子さんは、自身がイギリスのオックスフォード大に留学した際の寮生活をこう振り返る。
同大は原則全寮制で、皇族といえども特別扱いはされない。天皇陛下(59)は学習院大学大学院在学中の1983年6月から85年10月まで、同大マートンカレッジに留学。2年4カ月を寮で暮らした。雅子さまも外務省に入省後、88年10月に同大ベリオールカレッジに留学。同様に寮生活を経験している。
中世に建てられた寮は古い。男女の別なくシェアするシャワーは数が少ない上、お湯もなかなか出ず、いつも大行列ができていたと土地さんは言う。天井が高く暖房も利かない。すきま風もあって、陛下も留学中、寒さ対策としてテープで目張りをしたことを笑顔で明かしている。
「カレッジは高い塀で囲まれ、門番がいて、部外者は一切立ち入れないので、陛下も普通の生活ができたのだと思います」(土地さん)
留学経験がある天皇、皇后は、皇室の歴史上、お二人が初めて。これからの皇室を語る上で、お二人の海外経験を無視することはできない。
即位直前、2月の誕生日会見で陛下は、
「今後は多様性をおのおのが寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、発展させていくことが大切になっていくものと思います」
と述べた。即位直後にはお二人で、国賓として米トランプ大統領(73)と妻のメラニアさん(49)を迎え、通訳を介さずに堂々ともてなした。地方訪問の際は、待ち受ける人々に歩み寄り、気さくに声をかけて手を握る庶民感覚も持ち合わせている。