イラスト:サヲリブラウン

 先日のイベントも講演会も趣向は異なれど、どちらも観衆がいて初めて成り立つ性質のものです。お客さんたちが興味津々で集中してくださると、こちらもどんどん興が乗ってきて、準備してきた以上のパフォーマンスができる。筆舌に尽くし難い、目に見えぬグルーヴが立ち上ってくる瞬間があります。

 手応えを感じるたび、私は会社員時代の息苦しい会議を思い出します。ふてぶてしいので会議のプレゼンで緊張することはありませんでしたが、グルーヴが立ち上ってくることなんか、一度たりともありませんでした。いま考えると当然だ。だって、参加者は「めんどくさあ!」と思ってるんだもの。プレゼンがうまくいかないと悩んでいる人がいたら、そっと肩を抱き「当然だから気にすんな」と伝えたい。なんでTEDが面白いのかって、来場者に聞く気があるからでしょうね。

 さ、肉体も一度壊れると修理に時間とお金がかかります。今週も無事に過ごせるよう、悩まずさっさと寝ましょうね。

AERA 2024年2月19日号

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