香取市では、Down to Earth BEYOND HEALTHが在宅医療をおこなうクリニックを運営し、診療と並行してエビデンスを積み上げるためのデータ集めや研究をしていく予定です。いまは、クリニックで働いてくれる医師を募集中です。そのために、2月23日に香取市を案内するツアーとセミナーを開催予定です。今年1年は、そのチーム作りの準備期間と考えています。

 そして、在宅医療のデータをとってエビデンスを出すことに興味のある医師や医療従事者と、コミュニティーも作っていこうと思っています。

――たしかに、在宅医の学会などでは個々のクリニック・グループの事例発表はありますが、地域特性などもあり、そこから普遍的なメソッドにしていくことはあまり聞いたことがありません。

 個々の素晴らしいケーススタディーはたくさんあるのですけど、それが一般化できていないと思います。個別のケーススタディーから見えてくることを、エビデンスとして科学の視点でまとめ上げ、さらに実証し、一般化できるものにしていかなければなりません。これにより、介護される側とする側にとって、ベストな方法を提供することができると感じています。

 たとえば、「在宅になって何カ月目に介護者の精神的負担が増える傾向があるから、そこでメンタルヘルスのカウンセリングをおこなったり、負担が減るような取り組みをするとその後の介護うつになる確率を下げられる」などのエビデンスを出していきたい。患者になった後の道のりをペイシェントジャーニー(患者の旅)と言いますが、介護を受ける人・する人のそれぞれのジャーニーにおいて、何をどうしたら関わる人皆がより健やかに、幸せに過ごせるのかの答えを見つけていきたい。それはパブリックヘルスだからこそできることだと考えます。

 個人個人へのケアをする医療と、生活環境を俯瞰してみるパブリックヘルスの交差点にあるのが地域医療だと思います。中でも、在宅医療は、生活の場に医療が存在することから、この両方の視点が必要だと思います。

 祖父母との最後の3年間は、いろいろな気持ちが詰まった濃い時間でした。パブリックヘルスを専門とする自分が祖父母4人の介護・看取りを経験したことで、自分の使命を改めて悟る機会を与えてもらったと思っています。

(構成/杉村 健)

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