今回の裏金事件では、池田被告の地元事務所にあった複数のパソコンがドライバーのような工具で壊され、証拠隠滅の恐れがあると見られたことが逮捕につながった。小渕氏のときと同じような構図だ。
そうした背景があることから、小渕氏が聞き取り側にいることに疑問を持っていた自民党議員も多いのだ。
その小渕氏も含め、調査はどのような様子だったのか。
「書いてさえおけば問題ないのに」
「小渕氏は最初にいろいろ言いますが、あとは弁護士任せです。弁護士からは、なぜ不記載になったのか、問題がなかったのか、不記載のカネの管理はどうだったのか、とか細かく聴かれました。特捜部の捜査でも同じでしたから、さほど苦にはなりませんでした。ただ、こちらが『ずっと昔からやっていたようなのに、急にダメって言われてもね』『ノルマが多くてそれだけでも大変。キックバックはまれにノルマ以上、売れた時だけですよ』と愚痴っていると、『それはそうだな。書いてさえおけば問題ないのに』と森山先生が口をはさむ程度。小渕氏はさもありなんという表情で、メモを取りながら話を聴くだけで、いなくても全然調べられる内容でした」(前出の安倍派の国会議員)
今回、裏金の額が一番大きかったのは、在宅起訴された安倍派の大野泰正参院議員で5100万円。小渕氏の政治資金規正法違反事件は、不記載額が3億円超とその6倍ほどにのぼる。小渕氏は不起訴となった後に自分で弁護士や税理士を雇い、「第三者委員会」として調査を依頼し、「小渕氏に不正な処理や虚偽記載の認識はなかった」「ドリルで穴をあけたのはパソコン業者が修理のためにやった」との結論を出し、幕引きとなった。
小渕氏の疑惑は特捜部が2014年10月に強制捜査に着手する数カ月前から報じられており、
「最初は週刊新潮が疑惑を報じて、刑事告発が出された。その過程で、ドリルで穴という情報が入り、報道から2週間でガサ(家宅捜索)をかけた。こんなことは異例中の異例。事実、立件はしていないが証拠隠滅罪でも捜査している。そんな言い訳が通じるわけがない」
と当時、捜査にかかわった元検事が話した。