私生活の充実がプレーにも好影響を与えるというのがホーバス氏の考えだった。だから、「いつまでも練習しないで」と言って、選手たちを練習場から追い出したこともあった。ところが、数日すると選手たちはコートに戻ってくる。

「私が諦めたよ(笑)。日本代表にまで上り詰めた選手たちは、例外なく中学時代から朝からシュート練習をして、昼休みも練習する。もちろん、放課後もね。練習することで安心を得ていると気づいたんです。だったら、時間外練習を認めて、その練習のなかで効率的な目標設定をした方がいいと思いました」

 それでも、厳しい口調で言葉を投げかけたことは無駄ではなかったという。

「監督がどういう考えでチーム作りをしているのか、それを伝えることは大切です」

 成功を収めた指導者は叱ることを放棄したのではない。選手たちをポジティブな方向へと導く、より効果的な手法を知っているのだ。(スポーツジャーナリスト・生島淳)

AERA 2024年2月12日号より抜粋

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