自民党御用達かと思っていたら、吉本興業、松本さんまで引き受け、弁護士としては商売繫盛しているな」(前出・田代氏の先輩検事)

 それがなぜ、松本さんの弁護士となったのか。

 吉本興業のある中堅の芸人が、こんな裏事情を打ち明ける。

「松本は週刊文春が女性の実名報道できたことに驚いていた。5億円を超す賠償請求で記事がおとなしくなるはずと、知恵を付けられていたようだ。AERA dot.の記事にもあったように、松本が元ダウンタウンのマネージャーだった岡本(昭彦)社長を『岡本君』呼ばわりしているのは知られたところで、誰の言うことにも耳を貸さない裸の王様。週刊文春の記事に裁判で戦うと決めたが、吉本興業の顧問弁護士らは『吉本の仕事上でのトラブルではない』と、快く協力することはなかった。ダウンタウンを育てた大崎洋前会長も吉本を去っており、松本も簡単には頼みにくい」

「特捜検事が名誉毀損事件はあまりない」

「そこで、松本が独自に動き、個人的に親しい社員が協力するなどして弁護士を探した。名誉棄損で著名な弁護士にも声をかけたが断られて、ようやくたどりついたのが田代氏だった。松本は特捜部のやり手検事だったと聞いて『この先生なら戦える』と喜んでいたそうだ。ただ、田代氏はヤメ検なので刑事事件の印象。松本は警察沙汰になるようなこともあるのかと不安視する声も吉本の中にはある」(前出・中堅の芸人)

 田代氏に松本さんの弁護を引き受けた経緯を聞こうと事務所に連絡したが、

「取材対応はしないし、今後もする予定はない」

 とのことだった。

 元東京地検検事の落合洋司弁護士は、

「特捜検事あがりの弁護士が刑事事件の弁護をやることはよくあるが、田代君が著名人の名誉毀損の民事訴訟を受けるというのはどうなんだろう。松本さんのような大物をやれば法律事務所の宣伝にはなるが、勝てるかと言えば、そんな簡単なもんじゃない。正直、特捜検事が名誉棄損事件を経験することはあまりないからね」

 と首をひねるばかりだった。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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