吉本興業東京本部=東京都新宿区新宿5丁目

 吉本興業の幹部が話す。

「当初は一方的に松本の言い分を聞き、他の芸人も同様だったので、それが真実だろうという理解だった。しかし週刊文春は次から次へと“被害者”を出してくる。他の吉本芸人の関与も書いてくる。松本の言い分を鵜吞みにして、一方的に記事を批判して事実無根と言い続けるより、再度、第三者を交えて調査すべきと指摘され、コンプライアンスの点からも対応を見直すべきとなった」

 そして、

「週刊文春の記事は第2,第3、第4弾と進むにつれ中身が充実してきている。『松本を信じていいのか』という声もあり、方針を見直した。松本の主張が裁判で認められなければ、吉本と松本が対立することもありうる」

 という厳しい見方も示した。

弁護士は「陸山会事件」を捜査したヤメ検

 一方、松本さんが民事訴訟の代理人に選定したのが、田代政弘弁護士だったことも話題になっている。

 田代弁護士は、「週刊朝日」時代から筆者と因縁がある人物だ。

 2010年1月、東京地検特捜部は、大物政治家・小沢一郎衆院議員の元秘書だった石川知裕衆院議員(当時)や他の元秘書らを政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で逮捕した。いわゆる「陸山会事件」である。東京地検特捜部が狙いを定めたのは、小沢氏本人の立件だった。

 特捜部は小沢氏を何度も事情聴取し、事件への関与を追及したが、いったんは不起訴を決定する。その後、検察審査会に審査申し立てが出され、「起訴相当」の議決が出て、小沢氏は強制起訴されたのだが、結局2012年に小沢氏の無罪判決が確定した。

 その検察審査会の「起訴相当」議決の裏に、当時特捜部検事として陸山会事件を捜査していた田代氏が書いた恣意的な「捜査報告書」の存在があった。

 当時、週刊朝日記者だった筆者は数カ月間かけずりまわり、田代氏の「捜査報告書」を入手。小沢氏の判決直前のタイミングでスクープした。

 石川氏らが立件された政治資金規正法違反事件では、4億円の不記載に小沢氏の指示と了承があるかが焦点だった。石川氏は逮捕以前から一貫して、「小沢氏の指示も了承もない」と話していた。

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