しかし田代氏が石川氏を聴取して作った「捜査報告書」によると、

〈「小沢先生は一切関係ありません。」などと言い張っていたら、検事から、「貴方は11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは、石川知裕という候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをしていたら、貴方を指示した選挙民を裏切ることになりますよ。」って言われちゃったんですよね。これは結構効いたんですよ。それで堪えられなくなって、小沢先生に報告しました、了承も得ましたって話したんですよね〉

 などと、石川氏の供述とは正反対の内容が書かれていた。実は石川氏はカバンの中のICレコーダーで聴取の様子を録音していたが、そこには、小沢氏の関与を認める供述は残されていなかった。

 そして、この虚偽を含む「捜査報告書」が検察審査会に提出され、それが小沢氏の「強制起訴」につながった。小沢氏を起訴できなかった特捜部が、検察審査会に虚偽の「捜査報告書」を出すことで、恣意的な強制起訴をもくろんだという図式だろう。

安倍派裏金事件でも幹部の弁護

 小沢氏は当然のことながら無罪となった。東京地裁は判決で、

「内容と反する捜査報告書を作成した上で、検察審査会に送付することは、あってはならない」

 と特捜部を断罪している。石川氏は、

「田代氏のインチキな捜査報告書がなければ、小沢先生は強制起訴に絶対なっていない。本当に腹立たしい」

 と、今も怒りを隠せない。

 その後、田代氏は刑事告発されたが不起訴となった。しかし、懲戒処分を受け退官。

「上からの指示で捜査報告書は書いたんだろう。傷ついたまま検事を辞めていった」(田代氏の先輩検事)

 退官後、田代氏は弁護士に転身。2019年の参院選での公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された河井克行氏の弁護などを担当。安倍派裏金事件でも、幹部の弁護士となった。

東京地裁に入る河井克行被告(当時)=2021年3月23日、東京都千代田区
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