上記の調査で判明したことは、きっと多くの人が実際に体感していることで、驚きは少ないかもしれない。また、回答者の主観的な調査項目にとどまっているため、客観性に乏しいという限界もある。しかし早坂教授によると、これまで温泉地単体の調査はあっても全国的に統一フォーマットで行った調査は初めてであること、1万人以上の大規模調査であること、環境省という、国が主体となった取り組みであることなどは、過去に類を見ないという。
すでに公表したデータは3年分だが、統計を開始してから現在はすでに6年目に入っている。今後も研究を進め、医学的見地からの健康づくりを提唱するつもりだ。
短期間の滞在でも心身によい効果をもたらす
温泉地の滞在期間と滞在前後における心身の主観的変化を聞いた項目では、どの項目においても3泊以上でないと効果が見込めないとは言えず、短期間の滞在でもよい結果をもたらすことがわかった。
ただし早坂教授によると、たまにしか温泉に行かない人よりも、頻度が多い人のほうが効果は高い。「近場でもいいので、ちょくちょく行くのが望ましい」と言う。
とはいえ日帰りや1泊2日だと1日のほとんどを移動に費やしてしまう点は否めない。移動中に車窓から見る景色も旅の醍醐味ではあるが、「新・湯治」の観点ではできるだけ温泉地での滞在時間を長くしたいところだ。可能なら2泊3日の旅を計画しよう。
「旅館でゆっくりするのもいいですが、温泉地を散策したり、なんでもよいのでアクティビティーに参加したりするのがおすすめです」(早坂教授)
関東在住なら箱根、草津、鬼怒川、伊香保など、片道2~3時間の距離だと、現地でゆっくり過ごす時間が取れるはずだ。連休の予定がまだ決まっていない人は、「新・湯治」の温泉旅を検討してはいかがだろう。
(文/酒井理恵)