「幽☆遊☆白書」最速上映会イベントではアジア最大級の特注巨大スクリーンを設置。撮影に使用された衣装の展示や霊丸(レイガン)を撃てる体験型ゲームなども展開された(撮影/横関一浩)

 なぜ彼はここまで人々が夢中になる作品を作り続けることができたのだろうか。「まだ語られたことのないストーリー、見たことのない映像表現を常に探求している」と彼は言う。

「良い企画、突き抜けた企画というのはやっぱり反対意見が多くあるべき。なぜならば見たことのないものなので、わからないし、怖いんですよ。逆に全員が素晴らしいと思う企画は、ほとんどヒットしない。悪くない、というくらいのそれなりの結果で終わるんです」

「サンクチュアリ -聖域-」の企画を立ち上げたときも周囲は疑問だらけだったという。題材もニッチであるし、主演の一ノ瀬ワタルも当時は無名で、登場人物にイケメンもいない。けれど、それが一周回った新しさになると思った。ストーリーとクオリティーがあれば勝負できると信じてきた。

「僕は『打席』という言葉をよく使うんですけど、Netflixというのは、一打席一打席で結果を出さないといけない会社なんです」

 Netflixは「企画を通す」という概念のない会社なのだと坂本は言う。制作を進めるにあたって上司の許可をもらう必要はない。そのかわり責任が問われる。シビアな環境でヒットを生んできた。

 坂本を敬愛する俳優やクリエイターも多い。

 その一人が、「幽☆遊☆白書」で戸愚呂(とぐろ)弟役を演じた綾野剛(41)だ。綾野は数年前に出会った坂本のことを「心の友であり、クリエーションのパートナーである」と言う。製作期間を振り返って「大人に青春があるんだったら、今俺たちは青春をしているんじゃないかと感じた」と語る。

「同い年というのもあって、打ち解けるまでには時間はかからなかったです。彼は想像することをあきらめない。そして、それを可視化し、具現化する胆力がある。そこに僕は魅せられています」

「幽☆遊☆白書」で怪物じみた姿が異彩を放つ戸愚呂兄弟の映像表現にあたっては、国内外の企業と手を組み日進月歩の最先端VFX技術を惜しみなく注ぎ込んだ。監督の月川翔(41)は「自分のベストを出させてくれる人。誇りを持って一緒にお仕事したいと思う人です」と称賛する。

「幽☆遊☆白書」や「今際の国のアリス」のプロデューサーとして仕事を共にした森井輝(50)は、坂本を「人生のランニングパートナー」だと言う。

「僕らの電話は大体5分以内なんですよ。すぐに意図が伝わって『じゃあこうしましょう』と決まる。彼は常に何手か先が見えている。想像力があって、頭の回転が速い。それが魅力だと思います」

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ