「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし院長(画像=本人提供)
「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし院長(画像=本人提供)

 受験にのめり込んだ動機が、親自身の承認欲求を満たすことにある人ほど、無気力になるケースが多いように見受けられます。父親の浮気で夫婦は不仲、プライドがむしばまれた母親は、子どもを難関校に合格させることで自己を満たそうとする。また、学生時代に学業に力を入れてきた母親が自身の夢を子どもに託し、有名中学に入れなければという強迫観念を抱いてしまっている。あるいは、学歴が高い受験エリート組の親が、わが子も超難関校に入るのが当然で失敗はあり得ないという思考回路に陥る……。いずれも実際にあったケースですが、子どもの合格が親の人生の全てになるので、こういう場合は受験に落ちてしまったときのダメージが、より大きくなるわけです。

 心を空っぽにしないためにも、やはり、何のための中学受験なのか、そこが揺らいではなりません。中学受験は、大学受験の予行練習であるという意味合いが大きい。だからこそ、結果よりも、わが子はチャレンジ精神を養えたのだと捉えるべきでしょう。私のクリニックの調査では、中学受験でネガティブな感情を植え付けてしまうと、その後くすぶり続け、6年後の受験で3倍ものストレスになって親子に出てくるというデータが出ています。

結果を引きずらないために

 次の目標へ向かうには、まずは、自身の気持ちを真正面から受け止めて、一旦ズーンと落ち込むことです。ショックの大きさから気持ちにふたをして、仕事など別のことに猛進してしまうことがありますが、曖昧にするのが一番よくない。結局、しこりのように暗い気持ちが残り、切り替えられません。

 涙を流すことも、ストレスを打ち消す作用があります。親子一緒に泣いていいのです。よく、子どもの前でがっかりした姿を見せてはいけないと、無理に明るく振る舞おうとする親御さんもいますが、逆効果です。自身も気持ちがすっきりしませんし、受験勉強で高度な国語の物語文を読んで鍛え続けてきた12歳は、心情リテラシーが高い状態です。はれ物にでも触るように気を使いすぎると、子どもはかえって、親を悲しませているという心理的な負担を感じてしまうこともあります。

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親子一緒に取り組むことで心が安定