写真はイメージです(Getty Images)
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 いよいよ本格してきた首都圏の中学受験。過去問の仕上がり、“前受け校”の合不合、親子のメンタルなど、直前期だからこその悩みも少なくない。同時に、来年以降に受験を迎える家庭も心構えが必要な時期でもある。そこで、中学受験を乗り切りるための“ヒント”となる2023年3月26日の記事を再掲載する。(人物の年齢、肩書などは掲載時のもの。入試の状況は年度によって異なります)

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 2023年度の首都圏中学入試の受験者数は、過去最多の6万6500人。一層の激戦のなか、希望通りの合格をつかめなかった家庭も少なくない。受験のメンタル面での悩みに向き合う心療内科「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし院長によると、受験生本人よりも親のほうが残念な結果を引きずってしまい、無気力になるケースがあるという。

 志望校に合格できず心が沈むのは、ごく正常な気持ちの動きです。中学受験は親の役割が非常に大きいですから、挑戦した本人はもちろんのこと、全力で伴走した親だって、悔しくないはずがありません。ただ、結果にとらわれすぎてメンタルを悪化させてしまうと厄介です。

 実際、親御さんのほうが受験結果を引きずってしまうケースが多いのです。私のクリニックに訪れる動機は子どものメンタル面の不調ですが、よくよく話を聞くと実は親がトラブルの震源地ということがよくあります。

 通常の思考ができずに暴言を浴びせてしまい、子どもを追い詰めるというケースもありますが、気持ちの回復が追い付かずに、うつ症状を引き起こすこともあります。目立つのは、母親の「無気力症候群」です。食事を作ったり、掃除をしたりといった日常のことができずに放置し、家の中が荒れてしまうというケースが少なくないのです。

中学受験の目的とは

 この無気力の要因は何か。中学受験は、受験生はもちろん、親も総力戦です。自分の時間を犠牲にして、塾の送迎やお弁当作り、教材のプリント整理、勉強の補助、志望校選びなど、全エネルギーを費やして挑むわけです。それが受験終了を境にプツンとやることがなくなるので、立ち止まってしまう。

 本来、親には、思春期に向かう子どもの全人格的な成長を支えるという幅広い役割があるはず。ところが、試験に受かるか落ちるかの究極の二元論で成り立つ刺激的な世界に慣れてきたので、結果が明らかな形ですぐには出ない長期的な子育てに、物足りなさを感じてしまうわけです。そこに、不合格、という現実。これまでの労力は一体何だったのかという失望から、ますます意欲がそがれてしまうのです。

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受験で親の承認欲求を満たす