「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は受験直前期になった6年の娘の行動についてのお悩みです。

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安浪: 9月以降、学校がずっとあって、塾もあって、模試もいっぱいあって、そろそろ疲れ切っている頃だと思うんです。ですからとりあえず冬休み入るまでは好きにさせてあげたらいいんじゃないですか。塾に通っているのであれば、冬期講習が始まったら、嫌でも塾には行くと思いますし。

矢萩:まあ、試験前になると他のことをやりはじめてしまう、っていうのはあるあるですね。

安浪:やらなきゃいけないってわかっているけれど、体がそっちに向かないっていうことは本人にとって結構なストレスだったりします。ですから声かけというより、やることを細分化してあげるといいと思います。すごく小さい1つだけ、例えば毎日やる計算のルーティンなど「これだけやっていれば学力はキープできるって先生が言ってたよ」と言ってあげるとか。そういう、子どもが安心する命綱的なものを作ってあげたほうがいいのではないでしょうか。

矢萩:それは全く同意見ですね。ちょっと分析的に見てみると、試験前に突然何か別のことをし始めるのには2パターンあると思っています。掃除などを始めるタイプと、漫画やゲームに走るタイプ。掃除を始めるタイプの人は、自己肯定感や周囲との関係を意識してバランスをとって現実逃避していると考えられます。つまりゲームと違って掃除はもともとやらなければならないものだし、周りから否定されにくい行動だという意識が本人にある。そこまで自覚できているのなら基本は放っておけばいいと思うんですが、完全に放っておくんじゃなくて今やっていることを受け入れてあげたほうがいいと思うんです。何で勉強してないの、と叱るだけじゃなく、掃除をやっていること自体をまず評価してあげる。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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