消防との合同訓練でがれきの中を捜索するボーダーコリーのココ。救助犬には小型犬から大型犬まで様々な犬種がいる。育成に数年かかるため、活動期間は決して長くない(写真:日本救助犬協会TEAM7)
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 能登半島地震直後から、全国各地の災害救助犬が駆け付け、行方不明者の捜索を行ってきた救助犬たち。愛犬・ココと石川県輪島市で捜索活動に参加した元週刊朝日編集長(63)が本誌に寄稿した。AERA 2024年1月29日号より。

【写真】がれきの中を捜索するボーダーコリーのココちゃん

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「ココちゃん、おしっこさせましたか?」

 捜索する倒壊家屋の前で救助犬とその指導手(ハンドラー)の安全などを確認するサポーターに呼びかけられた私は、「させました」と相棒のココ(11)を見ながら手短に答えた。

 彼女のひと言で行方不明者(要救助者)の捜索を前に高まった私の緊張がすーっと抜けていった。

 救助犬とは災害で閉じ込められるなどした要救助者が発する体臭(ストレス臭)などの臭いを嗅ぎ分けて捜索する犬のこと。優れた嗅覚や機動力を生かして、災害現場や山岳遭難などに出動し、警察や消防と連携して捜索活動を行う。国内では自衛隊や警察など公的機関に所属する救助犬は非常に少なく、民間のNPOなどが実施する救助犬の試験に合格して災害救助犬と認定され、その後も実動訓練を積み、飼い主自らがハンドラーとなって災害救助犬に育てあげる。

地震30分後に待機連絡

 私は、NPO法人日本救助犬協会(以下、協会)の会員になって10年。今回の能登半島地震では、地震発生48時間後に現地に入り、捜索活動を行った。

 1月1日午後4時過ぎ、最大震度7の地震が能登半島で発生、テレビには家屋が倒壊して砂煙が上がる様子が映し出された。

 地震発生から30分後、協会から、私の所属する「TEAM7」内で出動できるメンバーの取りまとめの依頼と自宅待機の連絡が入る。能登半島への出動となれば日帰りは難しい。チーム内には認定された災害救助犬が5頭いるが、今回現地に行けるのは救助犬3頭。隊長とハンドラー3人でチームを結成した。

 翌2日、「3日の午前6時に中央自動車道の諏訪湖SAに集合」と決まった。行き先は被害が甚大な石川県珠洲市だ。

 災害救助活動では、現地での寝泊まりも食事も全て自分で用意する。被災地では停電や断水が続き、店舗は閉まっているため現地での調達はままならない。水、カップ麺、缶詰など食料品をそろえ、簡易鍋と卓上ガスコンロ、雨具、寝袋、携行カイロなどを用意した。

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