犬には、ドッグフードが4日分、水におやつ、ボール、厚手のマット、排泄(はいせつ)処理用の袋など。能登半島まではかなりの長旅なので、人も犬もこまめな休憩と排泄を心掛けないといけない。
3日の午前1時半過ぎ、車に荷物とココを乗せ、千葉の自宅を出た。途中、都内で仲間一人と犬を乗せ、中央自動車道へ。6時過ぎ、諏訪湖SAで出動メンバー全員が合流した。
休憩中にも現地から情報が入り、行き先は急きょ珠洲から輪島市門前町に変更された。その地区を管轄している愛知県の緊急消防援助隊とともに捜索活動をすることになった。
高速最後のSAでガソリンを満タンにした。金沢市内で高速を降り、日本海に出て海沿いを北上する。輪島に近づくにつれ、道路のひび割れ、隆起、陥没などが増えていく。危険なところには三角コーンが置かれて、その度に反対車線に出て徐行する。雨も降り始めた。石川県志賀町では住宅の石塀が崩れ、瓦が落ち、屋根をブルーシートで覆った家々が現れた。輪島市内に入ると地震の爪痕は激しく、住宅や電柱が傾き、1階が押しつぶされた全壊の家があちこちに見られるようになった。
午後4時半過ぎ、輪島消防署門前分署に到着。自宅を出て15時間。これから捜索に向かうという緊張感で気が張り詰める。
粉をまき風向きを確認
早速、名古屋市消防本部から出動の要請を受け、すぐに車で捜索現場へ向かう。1階が倒壊し、2階も傾いている家の前に着いた。通りの電柱は傾き、垂れた電線には注意を喚起する黄色いテープが垂れ下がっている。
日没になり、夕闇が迫る。捜索は時間との闘いだ。ヘルメットを被り、車内のケージからココを出す。初めての現場に慣らすため、周囲を歩かせるのだが、その時間も惜しく、犬の排泄を済ませてすぐに捜索できる態勢に入る。仲間の一人が粉をまいて風向きを調べた。粉は東から西に向けて緩やかになびいた。
救助犬は、空気中に浮遊する、要救助者の出すストレス臭を嗅ぎ取って捜すため、捜索エリアの風下から出すのが鉄則だ。ココなど協会の救助犬は要救助者に近づいたら、ほえて知らせるように訓練されている。