家計の余裕度を考える

 それはともかく、いずれのアプローチを取るにせよ、金利上昇の負担増に家計が耐えられるかどうかがポイントになる。「住まいのお金相談室」のファイナンシャルプランナー、有田美津子さんが言う。

「私が勧めているのは、金利水準が高い全期間固定で家計が苦しくならない借入金額を探り、その金額を変動で借りるのを検討するといったものです」

 既存の借り手はどうか。

「返済増に対処しながらほかの必要資金を確保しなければならない点が難しい。ローンのせいで教育資金や老後資金がしわ寄せを受ければ大変です。まずは負担増の大きさを実感することでしょう。5年後に1%金利が上がれば返済額は月1.6万円増えます。それが残りの30年続くと、返済総額は576万円も増えてしまいます。それを吸収できる余裕が家計にあるかを考えてください」(有田さん)

 家計予想で余裕がないとなれば「家計の見直し」を急ぐ必要がある。収入を増やせないか考えたり、節約での支出減を狙ったり、あるいは先の塩澤さんのように運用で増やすことを検討するのだ。

 住宅ローンアドバイザーの淡河範明さんは、見直しで忘れてはならないのが「物価」だと言う。

「多くの人が物価は上がらないという前提で考えてしまっています。金利が上がれば物価も上がるのが道理です。賃金が上がる人はいいが、賃金が上がらない人はローンの負担増とのダブルパンチになります。ぜひインフレを考慮に入れてください」

 実際は急激に返済額が上昇しない仕組みが取られていることが多い。しかし、金利が上昇すると返済総額が増え、それを返さなければならないことは変わらない。まずは自分のローンが金利上昇でどうなるかを知ることから始めたい。まだ金利が上がっていない「今」が始め時だろう。(編集部・首藤由之)

AERA 2024年1月22日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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