AERA 2024年1月22日号より
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 日銀の政策変更で、長期金利に続き短期金利も上昇する可能性が出てきた。住宅ローンにどう影響し、家計はそれに耐えられるのか……。AERA 2024年1月22日号より。

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 変動型住宅ローンの金利が上昇する可能性が高まっている。となると、「備え」が必要になる。

 専門家たちがそろって口にするのは、自分の住宅ローンの金利が上がった際に毎月の返済額がどれぐらい上がるのか、その金額を知ることだ。

返済額はこう増える

 ネットにはさまざまな試算シミュレーションがあるが、金融広報中央委員会のサイト、「知るぽると」の「借入返済額シミュレーション」で試算してみた。住宅購入にあたって「4千万円」を「期間35年」「変動金利年0.5%」で借りるケースを想定、一定期間後に金利が上昇した場合の返済額の上昇度合いを見てみた。

 当初の返済額は月々「10.4万円」。例えば、5年後に0.5%金利が上がって年1%になれば返済額は同「11.2万円」に上がる。上昇幅が大きいと返済額は増え、同じ5年後に年2%に上がると同「12.8万円」まで上がる。

 また、返済の初期段階では元本がさほど減っていないため、ここで金利が急速に上がると影響が大きい。逆に15年、20年と返済が進むと元本が減っているため、金利が上昇しても初期段階ほどの影響は受けない。表からは、そんな傾向が読み取れる。

 返済額では逆のアプローチもできる。金利が上昇しても、月々の返済額が増えなければ影響はなくなる。金利上昇時に、まとまった金額を一度に返す「繰り上げ返済」を行って元本を減らせば、それが実現できる。

 住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの取締役COO、塩澤崇さんに、同じように金利が上昇しても返済額が増えない「繰り上げ返済額」を試算してもらった。返済額上昇と傾向は同じで、5年後に0.5%金利が上がった場合、「242万円」を繰り上げ返済すれば返済額は変わらない。しかし金利上昇幅が大きくなると、やはり必要額は膨らみ、年2%だと「661万円」になる。

「変動型は金利上昇リスクはありますが、返済額が固定型より低いというメリットもあります。その低くなった分を資産運用に回すのです。米国株のインデックスなどに長期投資すれば運用益を得る可能性があり、かつ、繰り上げ返済に回せる準備ができます」(塩澤さん)

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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