プレーで目立つことは決して多くはなかったが、契約更改の場でもロッカーの雰囲気を良くしていたことが評価されたというコメントもあり、その人間性がチームに与えたプラスは大きかったはずだ。落合博満監督(当時)が人的補償の対象となる中で、唯一欲しいと思った選手が小田だったという逸話もあるが、その期待には十分応える結果を残したと言えそうだ。

 これまで挙げた2人は加藤と野口が期待通りの結果を残せなかったという部分も大きいが、FAで移籍した選手が結果を残しながらもそれに負けない成績を出したケースもある。その代表格が石井一久の人的補償で移籍した福地寿樹(西武ヤクルト)だ。広島では長く代走要員としてプレーしており、トレードで移籍した西武では2006年に85安打、2007年に87安打と結果を残したが、それまでのプロ14年間で規定打席到達は一度もなかった。

 しかしヤクルト移籍後は1年目から外野のレギュラーに定着すると、いきなりリーグ6位となる打率.320をマークし、42盗塁で盗塁王のタイトルも獲得したのだ。翌年も打率は.270と落としたものの規定打席には到達し、2年連続で盗塁王にも輝いている。その後は控えに回ることが多かったが、ヤクルト在籍の5年間で398安打、129盗塁は見事という他ない。ちなみに西武に移籍した石井も6年間の在籍で45勝をマークしており、先発として十分な役割を果たしており、両球団にとって成功だったFA移籍と言えるだろう。
    
 人的補償での移籍をきっかけにブレイクした例では一岡竜司(巨人→広島)が当てはまる。巨人での2年間で一軍登板は13試合で勝利、セーブ、ホールドはいずれも0だったが、広島では1年目から中継ぎの一角に定着。2017年と2018年はいずれも59試合に登板するフル回転の活躍で、チームのセ・リーグ3連覇にも大きく貢献した。その後は勤続疲労もあって成績を落とし、昨年限りで引退となったが、10年間在籍して277試合に登板し17勝、7セーブ、84ホールドという成績を残している。巨人に移籍した大竹寛の成績が8年間の在籍で130試合、28勝、0セーブ、25ホールドというのを見ても、チームに与えたプラスは一岡の方が大きかったと言えそうだ。

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